電帳法対応で脱”どんぶり” Eインボイス制度が変える業務(2)
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前回触れた、IT導入補助金によるインボイス対応への支援について、具体的な内容を説明したいと思います。資材納入先や外注先など毎月、取引がある相手は、適格請求書発行事業者であるか否かの把握が容易です。一方、現場経費などになるとスポット取引も多く、こうした取引先が適格請求書発行事業者かどうか、確認に苦慮するのではないでしょうか。
国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」では、Tで始まる13桁の登録番号を入力することで登録済みかどうかを瞬時に確認できます。また、登録番号ではなく会社名や団体名、個人名で検索できる名簿のダウンロードも可能です。(個人事業者の登録者数は9月20日時点で19万5935人)
未登録の一人親方や商店の店主に対しては、元請けや資材の発注者といった立場から、適格請求発行事業者として登録を要請されたり、消費税分に対する値引き交渉を求められたりするかもしれません。免税事業者は今後、こうしたことへの対応を考えておかないといけないでしょう。
買い手側の立場からすると、受領した適格請求書発行事業者番号を毎回、国税庁のサイトで検索して確認するのは大変な手間です。国税庁は、買い手の事業者が仕入登録するときに番号を入力するだけで、ソフトウエアを介して適格請求書発行事業者としての登録状況を即時に確認できるWEB−APIの仕組みを整えています。
インボイス制度のスタートを前に、原価管理システムや販売管理システムなど、仕入・請求管理に関するソフトでは対応も進んでいます。これをうまく利用すれば、適格請求発行事業者との請求受付をスムーズに確認できるだけでなく、免税事業者からの仕入税額控除の経過措置への計算や、仕入税額控除の計算、税の端数処理などを手作業よりもはるかに簡単かつミスなく処理でき、生産性の向上にもつながります。
建設会社はデジタル化が遅れている業種と言われていますが、インボイス制度をデジタル化への入り口と捉える建設会社も増えることは間違いないでしょう。ですが、逆に何の手も打たずに構えていると同業他社との格差が生まれることも念頭に置かねばならないと感じます。
執筆者プロフィール

三國浩明
株式会社建設ドットウェブ 代表取締役社長
土木建築会社に就職するも、コンピュータ業界に未来を感じ退職。長年に渡り、建設会社のデジタル化に従事し2001年に、原価管理システム開発会社を創業。2019年には、税理士や金融機関などに中小建設会社の経営ノウハウを発信する原価管理研究会を発足。著書として「利益を生み出す 中小建設業 原価管理術」(幻冬者)がある。