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電帳法対応で脱”どんぶり”          Fデジタルインボイス制度(1)

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 インボイス制度は面倒だと感じる部分もあるかもしれません。しかし、海外に目を向けてみると多くの国がインボイス制度をデジタル化し、請求・支払・入金消込・会計処理を迅速化できる仕組みを国家レベルで実現しています。日本政府もデジタル庁を設置し「人に優しいデジタル化」を目指しています。諸外国に比べて低迷している日本の生産性を大きな課題と捉え、対策を具体化しようとしているのです。
 OECD(経済開発協力機構)加盟国の一人当たり労働生産性の最新調査結果(2020年)を見ると、38カ国中、日本は28位(809万円)です。1位(2015万円)のアイルランドや3位(1454万円)のアメリカはもちろん、24位(858万円)の韓国よりも日本の労働生産性は低い状態です。
 13年ごろから日本の生産性の向上は足踏み状態で、20年はむしろ下がってしまっています。これは、単にコロナ禍で労働時間が抑制されたからというだけでなく、デジタル化の遅れが響いたことも考えられます。つまり、これまで勤勉勤労な日本人の長時間労働で仕事が賄えていたため、アナログな業務形態からの脱却に積極的に目を向けてこなかったことから、諸外国との労働生産性の差がいつの間にか広がってしまったのではないでしょうか。
 また、人手不足も深刻で、人員の余裕のない中小企業ほど生産性の向上は不可欠となってきます。
 こうした背景もあり、経済産業省とデジタル庁は、財務会計・販売管理・原価管理のソフトウエアメーカーなど197社(10月1日時点)が参加するデジタルインボイス推進評議会と一緒にインボイスのデジタル化を検討。ヨーロッパをはじめ、アメリカ・オーストラリア、シンガポールなどが採用しているデジタルインボイスの標準仕様「Peppol」(ペポル)の採用を決定し、今秋から運用を徐々にスタートしようとしています。今後は、日本版ペポルの標準仕様化の完成を目指すとともに、これに対応したソフトウエアの開発・運用を実現していくことになります。
 デジタルインボイスでは23年10月までに、企業間(BtoB)における売り手側からの請求書(電子データ)の、買い手側への送付や、買い手側の売り手側への支払(電子データ:金融機関への振込)、そして売り手側の入金自動消込と会計伝票作成の自動化を目指しています。

執筆者プロフィール

株式会社建設ドットウェブ 代表取締役社長 三國浩明

三國浩明
株式会社建設ドットウェブ 代表取締役社長
土木建築会社に就職するも、コンピュータ業界に未来を感じ退職。長年に渡り、建設会社のデジタル化に従事し2001年に、原価管理システム開発会社を創業。2019年には、税理士や金融機関などに中小建設会社の経営ノウハウを発信する原価管理研究会を発足。著書として「利益を生み出す 中小建設業 原価管理術」(幻冬者)がある。