電帳法対応で脱”どんぶり” Gデジタルインボイス制度(2)
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デジタルインボイスは、電子化ではなく「デジタル化」です。紙で処理していたものをPDFなど電子データに置き換えるだけの、従来型の取り組みは、結果として電子化であったと思います。電子化では業務フローはほとんど変わらず、メリットが出ないどころかコストや手間が増えてしまいます。スキャナ・サーバーなどの機器の追加や、PDFなどのファイルの保存場所、ファイル名称の命名基準を考え、さらには電子帳簿保存法のルールも考慮せねばなりません。
これに対し、デジタル化は業務を劇的に変えます。デジタルインボイス推進協議会が目指しているデジタル化の例を見ていきましょう。
デジタルインボイスは売り手事業者(A社)と買い手事業者(B社)との取引を互いに利用するソフトウエアが異なっていても円滑化します。A社が、自社の利用するソフトウエアでB社に対する請求書を作成し、請求IDを付与して送信します。すると、B社の利用するソフトウエアに請求書が届きます。さらにB社では、請求された代金の支払い(振込処理)も自動化され、支払時期に金融機関経由でA社に送金されます。またA社では、B社からの入金は請求IDが付与されたデータとして受領することで、入金消し込みも自動化されます。
さらに、会計処理においても図の通り、A社は請求時の「売掛金/売上」、入金処理時の「預金/売掛金」の仕訳伝票データが、B社においても請求受領時に「仕入/買掛金」、振込処理時に「買掛金/預金」の仕訳伝票データが、それぞれの会計ソフトに自動起票されます。
以上のように、デジタルインボイスを利用することで、売り手側、買い手側どちらも経理担当者による手入力がなくなり、作業時間を大幅短縮するだけでなく、入力ミスをなくすことができます。
デジタルインボイスは、請求書のペーパーレス化により印刷・封入、郵送、保管にかかるコストの削減につながるだけでなく、リアルタイムにデータを送受信することで、支払・入金の確認も大幅に短縮できます。既にデジタルインボイスがスタートしているシンガポールでは、請求〜回収のサイクルも約22日間短縮できたとしています。
デジタルインボイスは業務を大きく変えます。これまで手作業、手入力が当たり前だった経理業務の在り方を大きく変えていくことは間違いないと感じます。
執筆者プロフィール

三國浩明
株式会社建設ドットウェブ 代表取締役社長
土木建築会社に就職するも、コンピュータ業界に未来を感じ退職。長年に渡り、建設会社のデジタル化に従事し2001年に、原価管理システム開発会社を創業。2019年には、税理士や金融機関などに中小建設会社の経営ノウハウを発信する原価管理研究会を発足。著書として「利益を生み出す 中小建設業 原価管理術」(幻冬者)がある。