電帳法対応で脱”どんぶり” Hミドルオフィス業務のデジタル化(1)
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デジタル・トランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術で経営などを再構築することとされます。かつて盛んに言われたIT化を思い浮かべ「うちは社員にパソコンを使わせているから大丈夫」などと思われる建設業経営者も多いのではないでしょうか。しかし、DXはIT化と違います。ただ単にパソコンやソフトウエアを使うだけでは、生産性向上に限界があります。企業の業務そのものを変えていき、効率化、自動化することがDXのポイントです。
例えば、これまで手作業で集計していた日報をスマートフォンで入力して自動集計すれば、給与計算や工事台帳の作成にも利用できます。また、見積書の情報を入力することで、受注台帳や請求書、工事台帳などを作成することも可能です。このような標準化・自動化で、社員は現場でやるべき作業に集中できるようになり、新しいサービスや事業を開発する時間も生まれます。デジタルツールでできることと、人にしかできないことを区分けすることで、創造的で建設的な時間が確保できるようになります。
また、業務の自動化を進めると、ヒューマンエラーや業務の属人化を防ぐことができます。エクセルなどで管理すると、入力漏れや誤り、情報の消失がつきものです。ダブルチェックや繰り返しの確認である程度はミスを防げても、チェック自体に時間がかかります。その点、システムであれば入力漏れや転記ミス、コミュニケーション不足によるエラーを防げます。そして、DXにより、業務は標準化されていきます。つまり、誰が行っても同じようにパフォーマンスを上げられるようになるのです。
多くの会社には、ベテランでなければ処理できないような「この人でないと任せられない」業務があるものと思います。属人化した業務をそのままにすると、いずれベテラン社員が辞めたときに業務が止まってしまいます。アルバイトでも社員でもこなせるよう、標準化する必要があります。
DXによる業務の効率化は、働き方改革にもなります。建設会社で、いまだに週休2日制の導入が難しい要因の一つは、業務の非効率性や属人化ではないでしょうか。労働環境が改善されれば、社員の離職を防ぐことにつながり、よい人材も採用しやすくなります。建設業界でまだまだ進んでいないDXに、早期に取り組むこと自体が、他企業との差別化にもなります。競争力のある、魅力ある企業づくりへのきっかけにもなるはずです。
執筆者プロフィール

三國浩明
株式会社建設ドットウェブ 代表取締役社長
土木建築会社に就職するも、コンピュータ業界に未来を感じ退職。長年に渡り、建設会社のデジタル化に従事し2001年に、原価管理システム開発会社を創業。2019年には、税理士や金融機関などに中小建設会社の経営ノウハウを発信する原価管理研究会を発足。著書として「利益を生み出す 中小建設業 原価管理術」(幻冬者)がある。