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電帳法対応で脱”どんぶり”          Iミドルオフィス業務のデジタル化(2)

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 DX推進のポイントは、会社にとって最も非効率な業務に着目し、システム化の成功体験を重ねていくことです。一般的には、財務会計・給与計算や経費精算など主に「バックオフィス(後方支援)」を対象にしたソフトウエアに目がいきがちです。ですが、建設会社の場合、受注前の案件管理や顧客管理などの「フロント業務」と「バックオフィス業務」の中間にある「ミドル業務」の改善が効果的です。ここに、今後、取り組まねばならないインボイスへの対応も含まれます。
 建設業における「ミドル業務」は、@契約から受注管理A実行予算(支払予測)の管理B協力業者への発注業務C仕入れから支払いの管理(買掛管理)C請求から入金の管理(売掛管理)D収支予測などが挙げられます。
 これら「ミドル業務」は全て、会社にとって非常に大切な原価管理に関係しています。ミドル業務を原価管理システムで一元管理することで、業務の効率化と原価管理の改善の一石二鳥になります。
 それでは一元化の具体例を見てみましょう。例えば取引先にもらった納品書・請求書から「○月○日 A工事 コンクリート仕入れ▲円」と入力すると、工事台帳・仕入元帳・工事別原価一覧表など複数の資料を同時に自動作成できます。また、次のように@予算書から発注書に複写A予算書から未発注分を把握(発注漏れを防止)B支払予定表を元に支払伝票を自動作成C支払予定表を元に支払通知書を作成D支払予定表を元に銀行振込データを自動作成E受注情報を元に請求書を自動作成F入金消込を行い売掛金残高をリアルタイムに把握―までを効率化することも可能です。
 ミドル業務の一元管理は、経営判断にも役立ちます。例えば、営業が担当する工事の請求書や入金結果を全てバラバラに管理していると、会社全体の入金状況がつかめません。ソフトウエアを使えば、経理担当が入力した入金結果を、営業担当が各自のパソコンで閲覧できます。また、集計機能により月別や担当者別、取引先別といった形で集計・一覧化することで、売上は大きいけれど利益率が低い取引先の存在など、改善すべき課題を早期に把握することができます。
 さらに、原価管理に必要な見積もりや、実行予算・発注・仕入れなどを入力する事で、関連した情報を比較してディスプレイに表示したり、印刷したりできます。つまり、各業務を工事原価管理システムで一元化して情報を集約することで、経営の「見える化」がリアルタイムに可能となるのです。

執筆者プロフィール

株式会社建設ドットウェブ 代表取締役社長 三國浩明

三國浩明
株式会社建設ドットウェブ 代表取締役社長
土木建築会社に就職するも、コンピュータ業界に未来を感じ退職。長年に渡り、建設会社のデジタル化に従事し2001年に、原価管理システム開発会社を創業。2019年には、税理士や金融機関などに中小建設会社の経営ノウハウを発信する原価管理研究会を発足。著書として「利益を生み出す 中小建設業 原価管理術」(幻冬者)がある。