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行列のできる建設M&A相談所 第2回 M&A後に従業員は辞めないの?

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 本コラムでは、「M&Aのこれってどうなるの?」という疑問について、全5回の連載にて解説しています。第2回目は、「M&A後に従業員は辞めないの?」という疑問です。今回は従業員退職のリスクを抑えるために、四つのポイントから解説します。

■建設業界M&Aにおける従業員退職のリスク
 人材の獲得・確保を目的としてM&Aを検討しているという建設企業経営者の声をよく耳にします。「ヒト」の存在が重要な建設業界において、M&A実行後に譲り受けた企業の従業員が退職することは避けたい事態です。そのため、従業員への開示は慎重に進める必要があります。

・ポイント@ 従業員への開示のタイミング
一般的にM&Aにおける従業員への開示は、最終契約成立後に行われます。その理由は、事前にM&Aの予定が知られることで社内に余計な不安が広がり、さらに外部へ情報が漏えいすれば取引先との関係にも影響が出て、会社の存続に関わる問題となり得るからです。

・ポイントA 従業員に開示する際の社長の心構え
従業員への説明は、M&A実行の当日、終業後に全員を集めて行うケースが一般的です。譲渡側と譲受け側の役員などが揃って、一緒に開示説明を行うことが重要です。なぜM&Aをすることになったのか、今後の従業員の処遇がどうなるかなど、丁寧に説明します。ここで最も大切なことは、「社長自身がM&Aという決断に自信を持つこと」です。従業員のことを考えて、社長自身が良い相手だと思ったのであれば、従業員が否定することはないということです。

■結論、M&A後に従業員は辞めないのか
 従業員にとって、自分が勤めている会社がM&Aで他社に譲渡されるということは非常に不安を感じる場面であることは間違いありません。一方で、M&Aによって後継者問題が解決されることや、大手企業のグループに入ることは、従業員にとってはプラスに捉えられる可能性も高いです。従業員退職のリスクをゼロにすることは難しいですが、リスクを減らすことは可能です。上記のようなポイントを押さえながら丁寧に開示を進めていくことが、M&Aで成功するためには非常に大切です。

執筆者プロフィール

清水 貴章(しみず たかあき)

清水 貴章(しみず たかあき)
株式会社日本M&Aセンター 業種特化事業部 建設業界専門グループ 青山学院大学経済学部卒業後、損害保険ジャパン株式会社にて保険代理店向けのコンサルティング営業に従事し、日本M&Aセンターに入社。現在、建設業界専門グループに所属し、建設業界の中堅・中小企業のM&Aを支援している。 (株)日本M&AセンターHP(https://www.nihon-ma.co.jp/sector/c_construction.php