■「土木建設業と環境ビジネス最前線」 =第2回=〜地域密着型企業が取り組む食品リサイクル事業〜
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食品リサイクル事業とは、食品リサイクル装置にて食品残渣(ざんさ)を肥料(または、飼料)にリサイクルして、その肥料(飼料)を生産農家(畜産農家)に使ってもらう事業です。地域の土木建設企業が取り組んでいる環境ビジネスのうちで、今、一番多く見られるのが、この食品リサイクル事業です。ただ、失敗事例も多いというのが現状です。その理由の第一は、世の中に出回っている食品リサイクル装置の品質が良くないからです。「装置の品質が良くない=リサイクルされる肥料(飼料)の品質が良くない」ため、結果として、生産農家(畜産農家)がそのリサイクル肥料(飼料)を使っておらず、使い手がいないということで、肥料(飼料)が滞留して、新たなゴミになっているというケースが非常に多いのです。お金と手間を掛けた上、新たなゴミを発生させている、というわけです。
現在、私どもがコンサルティングさせて頂いている企業に、久保組(北海道)という年商10億円程度の地域土木企業があります。同社は、実に見事にこの食品リサイクル事業を立ち上げ始めました。2年ほど前、私どもが非常に優良なリサイクル装置を紹介したのですが、他の参入企業との違いは、まず、テスト機を導入し、徹底して有機・無農薬農法にこだわり、自ら直営農場を開拓したことです。そして、社内から農業担当者を選定して、テスト栽培を行い、自ら有機・無農薬農法を習得しました。さらには、リサイクル肥料と共にその農法を地域農家に啓発・普及させる活動を行ったのです。食品リサイクル事業ですから、食品残渣を集めなければ収益が上がらないのですが、食品残渣を集める前に、そういう活動を地道に手掛けたのです。つまり、ゴミを集める(入口)よりも、リサイクル肥料の使い手(出口)を重要視したのです。“入口重視戦略”ではなく、この“出口重視戦略”こそ、環境リサイクル事業が成功する為の最大ポイントなのです。
今では、直営農場で玉ねぎ・トマト等、無農薬野菜の栽培に成功して、さらに、無農薬トマトを使っての無農薬無添加トマトジュースの生産にも成功しています(http://www.vegecle.com/shop/kubo/)。また、近隣農家にもリサイクル肥料を供給して、キュウリ、トマト、玉ねぎ、スイカ、かぼちゃ、イチゴ、大豆、小豆、水菜等の栽培にも成功しています。そして、今後は、北海道産の無農薬食材を使って、こだわりのある食品加工メーカーとして成長させていく戦略も持っています。また、もちろん、このように“出口”を作ったことで、“入口”となるゴミの回収事業にも弾みがついてきて、より一層の収益性が確保されるようになって来ています。実に、将来性のある事業に育ってきています。
同社の取り組みは、まさに、地域土木企業の地域密着型食品リサイクル事業の成功モデルではないでしょうか。
船井総合研究所 環境ビジネスコンサルティンググループ
http://www.eco-webnet.com/
執筆者プロフィール

船井総合研究所
第八経営支援部
部長 菊池功