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若手記者が聴く〜社長、あなたはなぜ建設業を?@マツミ(大阪府茨木市) 宮脇みき代表取締役

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 「女に何が分かんねん」―。男性社会の文化が根強い建設の世界で、そんな言葉を投げ付けられたことは一度や二度ではない。
 大阪府を中心に、土木・建築事業を展開するマツミ。宮脇みき社長は、メイクのアドバイスをする美容部員、エステティックサロンの経営など、建設業の経営者として異色の経歴を持つ。マツミに入社したのは、サロン経営などで「がんばりすぎて燃え尽き症候群になった」タイミング。休職中に、当時の社長だった実松大輔会長から「退職した経理担当の後任として助けてほしい」と誘われたのがきっかけだ。2010年にパートとして働き始めた。
 入社後は、経理として財務状況の改善を推進。1年後には正社員となり、いつの間にか経理と営業を兼務することになった。さらに人材採用・育成の仕組みづくりや、業務のIT化などの社内改革に挑戦。それらの仕事で、効率化と売り上げの増加に貢献した手腕が認められ、22年に社長に就任した。
 入社当初を振り返ると、「建設業で働き続けることは頭の片隅にもなかった」という。しかし営業にも携わる中、「古くなった建物が改修されて新築のようにきれいになる。何もないところに立派な建物が完成する」といった仕事の全体像を目の当たりにして、「自分の中で建設業の魅力が増していった」。現在では、「自分がやったことが現場に残る、やりがいのある仕事」だと、強い愛着を感じている。
 一方、外部との関わりが増える過程で、建設業で女性が働くことの難しさも痛感した。当時は、冒頭のような心ない言葉が当たり前のように使われる業界。その時の経験が、現在の活動につながっている。社業の他、日本建築仕上学会女性ネットワークの会に所属。大阪支部長として「女性も働きやすく活躍できる業界」をつくるために奮闘中だ。その成果を「ここ数年でようやく理解が広がり、環境整備が進みつつある」と感じる反面、「中小企業ではまだまだ」と道半ばであることを強調する。
 自社のマネジメントでも、最も大事にしているのは“人”。最優先で人材育成と働きやすい環境づくりに取り組んでいる。21年には日本次世代企業普及機構のホワイト企業認定を受け、働きやすさのお墨付きも得た。女性社会でも、男性社会でもなく、「性別に関係なく、誰もが夢を持って働ける業界」。その実現に向けて、今日も業界に向かい合う。
(大阪支社大阪支局=伊藤幸大)