官民連携で進むインフラ維持管理 貝塚市他
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公共施設とは、住民が安全に安心して日常生活や社会活動を送れるよう提供される重要な「公共サービス」の基盤だ。一方で、その整備を担ってきた国や地方公共団体、特に人口減少が著しい地域では、限られた人材と費用をどのように有効活用し維持管理するかが課題となっている。そうした社会情勢を背景として、貝塚市をはじめとする泉州地域の4市1町が2023年8月に「広域連携と官民連携を組み合わせた公共施設マネジメントスキーム構築調査に関する協定」を結び、広域連携と官民連携による包括的管理に乗り出した。
「著しい人口減少に伴う税収の伸び悩みで、公共サービスの維持に切迫した思いを抱えている」。貝塚市の酒井了市長は泉州地域の抱える課題についてそう説明する。その上で、「市境を超えて広がる住民の生活圏とニーズに合わせ、持続可能な行政サービスの在り方を広域で考える必要がある。まずは相互利用、次に共同管理、最後に統廃合の検討というステップだ」と今後の広域行政の在り方について自らの考えを述べる。
包括的管理は、小中規模の市町に所属する職員や技術者の公共施設整備経験の蓄積とモチベーションの向上などのメリットをもたらす。さらに新たな業務を請け負うことになる地元事業者のビジネス機会も広がる。一方で、課題となるのがその地元事業者の育成だ。酒井市長は、「地域で資金を循環させることが理想だが、取り組みの背景や意義を説明する機会や勉強会などを行う必要があるだろう」と話す。
他方、奈良県内では一足先に公共施設の包括的管理委託の検討が進められている。大和高田市や広陵町など2市3町は、学校施設の維持管理に関する発注状況を共有し、業務仕様の“共通言語化”に取り組もうとしている。
広陵町の担当者は、「地方都市の広域連携は全国的に進むだろう。(現状)単独で包括管理を発注している場合でも事業者側から広域連携の提案を受けることもある」と、民間事業者の創意工夫やノウハウを生かした新たな取り組みに対する意識が、小規模な地方公共団体にも既に広く浸透しているとの認識を示した。
(大阪支社)