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「攻めのDX」・「守りのDX」の格差。【第5回】現場のリテラシーが低い建設企業でも、勤怠システムを活用し、2024年問題への対策を実現するためには

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 第4回では、現場のリテラシーが低い建設企業が、段階を経てシステムを活用する傾向にあることを述べた。実際にITリテラシーが低い従業員がいる現場でも、システム導入ができた具体的な事例について触れていく。

 紹介する企業は元々、勤怠管理を手書きの出勤簿やExcel管理で行っていた。
来たる「2024年問題」などの法改正への対応を視野に検討を進めたこちらの企業は、業界特有の課題がある中、どのように「守りのDX」を推し進めたのだろうか。
(※1)建設業界「2024年問題に」備えてジンジャーを全社導入!システム化により適切な勤怠管理を実現!
https://hcm-jinjer.com/results/124150/

 こちらの企業は、勤怠管理を紙やExcelで行う中で、各拠点に存在する出勤簿に記載された情報を、手入力で給与システムへ転記していた関係から、業務が重複している点に課題を感じていた。

 また、格安の別システムを試験的に導入していた中で、「勤怠管理の課題のみを解決できるシステムではなく、業務を多角的に効率化できるシステムのほうが良いのでは?」という話が上がり、勤怠にとどまらず給与計算までの一連業務の工数削減や、人事情報の管理体制の見直しまで検討し始めた。
 加えて、定期的に発生する法改正や「2024年問題」などへの対応や、社会的にDX推進が話題となった点から、システム導入へと至っている。

 こちらの企業が、自社に合うシステムを選ぶ上で大切にしていたのは「幅広い年代の社員にとって使いやすく、分かりやすい画面感であるか」という点だ。どの年代層の従業員でも使いやすいと思えるシステムは、導入後の運用イメージが湧くため、システム選定をする上で大切な要素と言える。

 システム導入後は社内で前向きな影響が出ており、働き方の見直しや社内ルールを整備するきっかけとなり、段階的にDXによる業務改革を実現できているそうだ。

 今回紹介したように、ITリテラシーが低い従業員が多い業界だからこそ、システム選定における基準を明確化しながら、実現したいDXの理想像を描くことが重要だ。
 
 業界特有の課題を解決するには、「守りのDX」を段階的に行いながらも、足元の対策だけでは終わらないように「攻めのDX」を中長期的に見据え、将来的な人手不足の課題や、社内の業務改革へとアプローチしていくことが、建設業界が抱える複雑な課題への対策になると考えている。

執筆者プロフィール

jinjer且キ行役員CPO(最高プロダクト責任者) 松葉治朗(まつば・じろう)

松葉治朗(まつば・じろう)
jinjer且キ行役員CPO(最高プロダクト責任者)
人材系ベンチャー企業を経て、ネオキャリアに転職しクラウド型人事労務サービス「ジンジャー」の立ち上げに携わる。その後、同サービスのCPO(最高製品責任者)に就任し、HRテクノロジーをけん引するプロダクトへと成長に導く。また、人事データ活用に関するセミナーへ登壇するなどHRテクノロジーの啓発活動にも積極的に取り組んでいる。