「2024年問題の対応に追われる建設業界のイマ〜中堅・中小企業の実情と打開策を、現場経験豊富なコンサルタントが経営目線で解説!〜」
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建設業に限らず、業務量が過多となっている部門への対策の一つが業務分担である。建設現場での働き方改革推進においても、さまざまな建設会社が取り組んでいる。しかし、こと建設現場においてはこの業務分担一つを取っても難易度が高く、頓挫してやめてしまう、または機能はあるが効果が見られないという例を多く見聞きしている。第2回では、その業務分担について取り上げる。
そもそも建設現場において、所長・主任・現場員で既にある程度の役割分担をしているが、業務分担は、そこからさらに切り分けを実施していくこととなる。その中身としては、コア業務(=現場でしかできない仕事)とノンコア業務(=現場でなくてもできる仕事)の切り分けであり、ここを“規制概念に縛られず分離する”ことが現場の負荷軽減の第一歩となる。
そして、次の段階が専門組織の組成である。いわゆるミドルオフィスと呼ばれる位置付けで、現場と本社機能の間に立ち、ノンコア業務を専門に受け持つ組織とする。最終的な理想形は、現場人員が日中、現場管理業務に注力し、現場から事務所に戻ってきた際には、その日作成すべき書類などがおおむね完成した状態で手元に届いているという形である。実際、この取り組みに成功している地場ゼネコンや、施工管理機能を持つ建材代理店が存在し、2024年の規準をクリアする労務状況を実現している。
一方で、冒頭にも述べた通り、失敗例も多く存在する。その大きな要因の一つが、組成初期段階の進め方にある。コンセプトとして理解はできても、いざ実運用段階になると、現場側としては「何をさせれば良いのか、何ができるのか分からない」し、ミドルオフィス側も「一体何をすれば良いか分からない」という事態が発生する。
それを解消するためにも、初期段階こそ細かくSTEPを設けて丁寧に進めることが重要である。下記にその一例を記載する。
STEP1:自社の現場業務棚卸し
STEP2:ミドルオフィスの分担業務明確化(難易度ごとに移管時期を設定)
STEP3:必要スキルや情報の整理・補完
STEP4:試運転調整
STEP5:本格スタート
特に各STEPでの進捗管理と軌道修正が成否を担う鍵となる。単に組織を作れば解決する問題ではないという認識が重要である。
第3回では、「DXツール導入による現場の実情と効率活用のポイント」について解説したい。
執筆者プロフィール

折田 考(おりた こう)
株式会社タナベコンサルティング ストラテジー&ドメインコンサルティング チーフマネジャー
建設業界にて法人営業・現場管理・コンプライアンス管理など幅広く経験し、当社へ入社。”現場視点×経営視点”のコンサルティングを信条とし、建設業界を中心に企業の実態に寄り添うコンサルティングスタイルに定評がある。1級建築施工管理技士・1級管工事施工管理技士・1級電気工事施工管理技士。 株式会社タナベコンサルティング https://www.tanabeconsulting.co.jp/vision/