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「2024年問題の対応に追われる建設業界のイマ〜中堅・中小企業の実情と打開策を、現場経験豊富なコンサルタントが経営目線で解説!〜」

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 DXという言葉が広く認知され出したのは2018年の経済産業省のレポートが起点と言われている。それから6年が経過し、さまざまな業界においてその浸透を感じられるようになってきた。

 建設業界においても、多種多様なアプリやソフトウエア、ハードウエアが登場している。筆者も建設DXに関する展示会などに積極的に参加しているが、その技術進歩は目覚ましく、ニッチな業種においても活用できるツールがそろってきた印象である。

 ただ、一番の問題は、そこからどのような組み合わせを見いだすかである。豊富なラインアップがある一方で、それらは建設の業務フローにおける特定のシーンを想定したものも多く、どれか一つで自社の業務全体を劇的に変える魔法のようなツールは存在しない(※可能性があるのは生成AIだが、現在はノウハウを蓄積している段階という印象だ)。
では、そうしたさまざまなツールから、自社に即したものを選ぶためにはどうすれば良いのか。そのカギは、@全体像把握 と、 Aアジャイル型アプローチの掛け算にあると感じる。

 @の全体像把握とは、DX鳥瞰(ちょうかん)図やソリューションマップといった、いわゆる自社業務フロー単位でのデジタル化進捗状況の可視化である。全社最適の視点でDXを進めるためには、これを作成することが必須である。全体像を把握しないまま、部分最適のツールの採用を繰り返し、統制が取れなくなった建設会社もある。使われなくなったツールがPCやモバイルに堆積し、個人によりバラバラの運用が行われてしまう。そうならないため、全体像の可視化は重要である。

 一方で、Aのアジャイル型アプローチとは、少し乱暴に要約をすると“ある程度の失敗を許容した上で、小さく早く試していく”ということである。これはソフトウエアの開発方法の一つであり、建設現場のように建物用途や工種、規模、現場事情などにより、諸条件が大きく変化する場合に有効な手法と言われている。このアジャイル型でDXを進める上での留意点が2点ある。一つ目は、撤退基準を決めること。期限を決め効果測定を行い、やらないものはだらだらと続けない。二つ目は先述した全体把握における、ツール間の連携を担保することである。これは、ツール選定における第一条件で、これができないと二重業務が発生する可能性が高いため、よほどのメリットがない限りそうしたツールは候補から外すべきである。
 以上が建設現場のDXにおけるポイントだ。第4回は教育という観点から、働き方改革を考える。

執筆者プロフィール

株式会社タナベコンサルティング ストラテジー&ドメインコンサルティング チーフマネジャー 折田 考(おりた こう)

折田 考(おりた こう)
株式会社タナベコンサルティング ストラテジー&ドメインコンサルティング チーフマネジャー
建設業界にて法人営業・現場管理・コンプライアンス管理など幅広く経験し、当社へ入社。”現場視点×経営視点”のコンサルティングを信条とし、建設業界を中心に企業の実態に寄り添うコンサルティングスタイルに定評がある。1級建築施工管理技士・1級管工事施工管理技士・1級電気工事施工管理技士。 株式会社タナベコンサルティング https://www.tanabeconsulting.co.jp/vision/