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「2024年問題の対応に追われる建設業界のイマ〜中堅・中小企業の実情と打開策を、現場経験豊富なコンサルタントが経営目線で解説!〜」

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 働き方改革を進めるにあたって、社員教育は中長期的にみて最も効果の大きな施策となる。例えば新入社員が現場所長を務められるようになるまでに15年かかる会社と、7年かかる会社では、生産性に大きな違いが生まれる。もちろん、社員教育による生産性の向上を果たすためには工夫が必要で、やみくもに未熟な若手を現場所長に任命したとしても、育つどころかつぶれてしまうリスクもある。
 そのリスクを最小限にした上で、若手職員の早期育成を果たすために重要と考えられるのが、@教育体系の確立、A現業業務とスキルの見える化、BDXツールの3点だ。
 @の教育体系の確立については、階層別教育を現場監督業務に特化する形で構築する。現場における4大管理と言われる、安全、品質、工程、原価、それぞれの項目について、年数や等級ごとの目標を定め、それぞれを学ぶための最適な手段を設定する。それらを一覧化し、キャリアデザインの指標とすることで、若手社員は自身の成長曲線をイメージでき、また教える側も何を指導するべきかのイメージを共有できる。
 Aの現業業務とスキルの見える化とは、現場監督自身の業務の棚卸しである。得てして、建設業界の現場は今なお“背中を見て覚えろ”という文化が根強い。それは、裏を返すと自身のスキルや業務の言語化、資料化が苦手(もしくはする時間がない)ということに起因している。そこをBPOなども駆使して言語化、資料化することが重要である。
 その際に役に立つのが、BのDXツールだ。DXツールの一つに、現場管理のノウハウをスマートフォンで簡単に動画化し、テロップを付けられるものがある。タイピングの手間は掛かるが、一度入力すると100カ国以上の言語に翻訳する機能もあって、外国人就労者もカバーできる。
 また、こと新人・若手の教育においては生成AIも有用である。ある企業の建設業特化型生成AIであれば、仮に「階高、構造、延べ床面積、建物用途」、「週休・1日の人工想定」というキーワードを入力すると、またたく間に設計工程から地盤調査、設備・仕上げ工事まで含む工程の概算を算出してくれる。また標準的な作業手順書であれば、橋脚のひび割れ補修工事など細かな内容に対応したものを一瞬で作成してくれる。こういった計画作成を指導と捉えると、新人の横に常にベテラン所長がついて教えている状況と変わらないくらいだ。そのような生成AIを活用しない手はないだろう。
 また、このAIがさらに進化すれば、現場経験の浅い若手が即戦力級の活躍ができる日もそう遠くはないとすら感じられる。こうしたDXの恩恵をぜひ現場の教育でもフル活用していただきたい。
 最終回では働き方改革と入り口管理の観点をまとめる。

執筆者プロフィール

株式会社タナベコンサルティング ストラテジー&ドメインコンサルティング チーフマネジャー 折田 考(おりた こう)

折田 考(おりた こう)
株式会社タナベコンサルティング ストラテジー&ドメインコンサルティング チーフマネジャー
建設業界にて法人営業・現場管理・コンプライアンス管理など幅広く経験し、当社へ入社。”現場視点×経営視点”のコンサルティングを信条とし、建設業界を中心に企業の実態に寄り添うコンサルティングスタイルに定評がある。1級建築施工管理技士・1級管工事施工管理技士・1級電気工事施工管理技士。 株式会社タナベコンサルティング https://www.tanabeconsulting.co.jp/vision/