「2024年問題の対応に追われる建設業界のイマ〜中堅・中小企業の実情と打開策を、現場経験豊富なコンサルタントが経営目線で解説!〜」
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建設現場では “段取り8分”という言葉がよく使われている。仕事の質・効率は、それを始める準備段階で8割方は決まっているという考え方で、歌舞伎の幕あいや石段職人の仕事の準備などが由来だと言われている。建設業においては、着工までの材料や協力業者手配、施工図や施工計画の作成が準備段階に該当する。それらにおける事前算段の深さや工夫が現場監督のエンジニアリング力の一つであり、監督としての力量が問われる部分だ。しかし、働き方改革の観点から考えた場合、その段取りを考える際に一番重要となるのが、工期である。工期が適正でないと、昼夜の突貫工事が発生し、土日も問わず現場が稼働することになる。適正工期は重要な指標の一つだ。
建設業法19条の5において、「注文者は、その注文した建設工事を実施するために、通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。」と定められている。現に2023年9月、国土交通省の中央建設業審議会の中間とりまとめにおいても、発注者だけでなく受注者にも適用する要旨の検討も行われており、真の“段取り8分”は契約前の段階から始まっていると言っても過言ではない。
ポイントとなるのは、契約前の構想段階における適正な工期把握と、契約方法である。事業性が問われることの多い建設業においては、得てして発注者のさまざまな都合によって完成期限が決定される。必然的にそれが工期となるのだが、そこを交渉によって変更させるためには、相当の現場知識、経験に加え、発注者側の現場事情に対するある程度の理解が必要となる。
この“理解ある発注者”は、近年段々と増加傾向にあると感じるが、業界として発注者に向けての理解醸成を図っていく必要がある。またそれと同時に、入り口段階での工期想定の精度向上が大きなポイントとなる。既にBIMやCIM(※計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図ることを目的とする。国土交通省BIM/CIMポータルサイトURL:https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimsummary.html) によって事前にバーチャル空間で施工を完了させる方法はスーパーゼネコンにおいても採用されている手法である。そこに生成AIを組み合わせたものが現在の最先端だ。ここからは仮説を含むが、未来に向けては、プラットフォーム化も一考の余地があると考えられる。建物種別や用途等によるプラットフォーム内で、企画構想段階の工程概算から見積もりまでを完遂させる。そうすれば、発注者側にとっては、計画からの予算のブレは少なくなり、そこを見据えた事業の組み上げが可能となる。
規制概念に捉われないさまざまな取り組みが建設現場の働き方改革の実現には必要不可欠である。
執筆者プロフィール

折田 考(おりた こう)
株式会社タナベコンサルティング ストラテジー&ドメインコンサルティング チーフマネジャー
建設業界にて法人営業・現場管理・コンプライアンス管理など幅広く経験し、当社へ入社。”現場視点×経営視点”のコンサルティングを信条とし、建設業界を中心に企業の実態に寄り添うコンサルティングスタイルに定評がある。1級建築施工管理技士・1級管工事施工管理技士・1級電気工事施工管理技士。 株式会社タナベコンサルティング https://www.tanabeconsulting.co.jp/vision/