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知ってお得なお金の話 第9回 「変額個人年金保険」は「投資信託」に似ている?

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 昨今では、銀行や証券会社でも保険の販売ができるようになったことから、「個人年金保険」に加入する方が増えています。「個人年金保険」にもさまざまなタイプがあり、特にしっかりと理解してから加入しなければいけないのが、「変額個人年金保険」です。

 「個人年金保険」と言えば、老後資金作りを目的に加入する方が多く、名前に「保険」と付くことから比較的安全なイメージを持たれる方が多いのですが、実はいろんなタイプがあります。
大きく分けると、将来、受け取れる年金額が確定している「定額型」と、運用次第で年金額が変動する「変額型」です。
 「定額型」は、加入時に将来受け取れる年金が決まっていますので、安心感がありますが、インフレに弱いのが弱点です。また、一般的には、加入時の予定利率で受取額が決まりますので、予定利率の高い時期に加入された方は、お得ですが、現在のような予定利率が低い時期に加入された方は、確定年金(受取期間が決まっているタイプ)でも、受取額は支払額より少し多いだけですし、終身年金(生存している限り受け取れるタイプ)に至っては、保証期間が付いていても、長生きしませんと受取額は支払額を下回ってしまいます。
 最近、脚光を浴びている「変額型」は、さまざまなタイプがありますが、基本は運用成績によって、将来の年金額が変動すると言うものです。「変額型」は、自己責任で運用するため「投資型年金」とも呼ばれています。「変額型」は、保険料を一時払いするものが主流で、支払った保険料を保険会社の「特別勘定」で管理し、年金を受け取るまでの間、運用していきます。「特別勘定」に入ったお金は、保険会社ごとに商品は違いますが、国内外の株式や債券などで構成された投資信託で運用されていきますので、当然、株式市場や債券相場の変動により、年金原資が増えたり、減ったりします。昨年のような世界中を揺るがすような大幅な下げがありますと、当然、運用している年金原資も減ることになります。
 以上のような理由から、「変額年金」は年金商品ではありますが、運用自体は、投資信託でされていることから、直接、投資信託を買うのと、どちらがおトクかという話しが出てきます。どちらも「メリット&デメリット」がありますので、いくつかの観点から見ていきたいと思います。
 まず、コストの面から見ますと、「投資信託」の場合は、当初購入するときの販売手数料と運用中の信託報酬が掛かります。これに対して「変額年金」の方は、契約初期費用や運用関係費用のほかに、保険関係費用もかかりますので、一般的には、コストの面では「変額年金」の方が高くなります。
 税金の面から見ますと、「投資信託」の場合には、途中で分配金が出ますとその都度課税されて残りが再投資に回りますが、「変額年金」の場合は、解約時または年金受取時までは課税が行われず、全額が再投資されますので、この点では「変額年金」の方がオトクになります。また、運用期間中に亡くなった場合、最低でも支払った保険料相当額は死亡給付金として支払われ、このお金は相続税の非課税枠に含めることができますが、「投資信託」の場合は、運用が上手くいっていない時期でも、そのときの時価評価になります。
 ただし、中途解約した場合、「変額年金」は運用期間中に解約しますと、ほとんどの会社では早期解約控除を設けていて、早い時期に解約するほど多くの手数料が取られてしまいます。「投資信託」の場合は、一部の商品で信託財産留保額が取られますが、そのほかには手数料はかかりません。
 さらに、運用商品の選択と言うことになりますと、直接、投資信託を購入するのであれば、すべての投資信託の中から自由に選択可能となりますので、流行の投資信託なども選べますが、「変額年金」の場合は、各保険会社の用意したメニューの中から選ぶことになり、商品も比較的オーソドックスなものが多くなります。
 以上のことから、どちらも一長一短がありますので、ご自分のニーズ(運用重視なのか、さまざまな保障もあった方がよいのかなど)に合わせて選ぶことが大切です。
 また、「変額年金」を選択する場合でも、比較的積極的に運用したいのか、ある程度安心感があった方がよいのかでも選択する商品は違ってきます。安心感があった方がよい方は、元本保証があるタイプがお勧めですが、その分保険関係費用が高めになる事も覚えておきましょう。さらに、商品の詳細は、保険会社ごとにかなり違いますので、ご自分のニーズに合わせ、よく比較検討して選ぶことが重要です。

安藤絵理(ファイナンシャルプランナー)
安藤絵理FP事務所 ホームページ http://www.ando-fp.jp/

執筆者プロフィール

安藤絵理(ファイナンシャルプランナー) メールアドレス info@ando-fp.jp