建設業界のM&Aとは【第1回】M&Aの目的、メリット・デメリット
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近年、建設業では倒産や廃業が増える一方でM&Aが活発化している。特に中小企業の「後継者不在」「経営者の高齢化」「人手不足」などが深刻な課題となっており、事業承継の一手段としてM&Aを選択する経営者が増えている。また、成長戦略としてM&Aを活用する企業も増加傾向にある。M&Aは「倒産・廃業の回避」や「経営課題の解決」に効果的であるといえる。
■M&Aとは
M&A(Mergers and Acquisitions)とは合併と買収を意味する言葉である。事業承継を目的としてM&Aを選択する中小企業が増加している。2024年の日本国内のM&A件数は4700件(前年比17.1%増)と過去最多を記録した。
M&Aにはさまざまな手法がある。合併には吸収合併や新設合併、買収には株式譲渡・事業譲渡・会社分割などの手法があり、資本提携や業務提携も広義のM&Aに含まれる。中小企業のM&Aでは、株式譲渡、事業譲渡、会社分割が多く採用されている。各企業の状況や規模に応じて、最適な方法を選択することが重要である。
■建設業界のM&A動向
建設業界は建築資材の高止まり、職人の高齢化や若年層の労働力不足、人件費の高騰などで経営が圧迫されており、こうした背景から倒産件数が増加している。帝国データバンクによると、23年の倒産件数は1671件(前年比38.8%増)、24年1〜10月は1566件と過去10年で最多ペースとなった。
また同社によれば、建設業界の後継者不在率は業種別でトップの59.3%であった。この状況で事業承継を目的としたM&Aが活発化しているほか、人材確保、事業拡大、新規参入を目的としたM&Aや、上場企業による業界再編などの動きも見られる。
■M&Aのメリット・デメリット(譲渡企業の場合)
譲渡企業の主なメリットは、「後継者問題の解消」「従業員の雇用維持」「資金調達や事業拡大」「経営者の個人保証解除」「売却益の獲得」などがある。特に経営者が会社の連帯責任者である場合、親族や従業員に事業承継が難しい場合もあるが、M&Aを選択することで、個人保証を解除した上で引き続き経営に携わることも可能である。売却益をもとに新たな投資機会に活用する経営者もいるため、経営者自身にも大きなメリットがある。
一方でデメリットは、「譲渡先が見つからない」「従業員の待遇悪化や離職」「取引先との関係悪化」などが起こるケースもある。譲渡したいタイミングに希望通りの相手が見つかるとは限らないため、実績豊富なM&A専門家に早期に相談するとよいだろう。専門家は、譲渡先の選定や交渉、従業員や取引先への配慮などさまざまな面でサポートを提供する。早期に専門家へ相談することで、デメリットを回避し、譲渡後のリスクを最小限に抑え、円滑なM&Aを実現することができる。
執筆者プロフィール
玉田卓也(たまだ たくや)
株式会社M&A総合研究所企業情報第八本部第二部 シニアマネージャー
大学卒業後、株式会社三井住友銀行で7年間、相続対策・事業承継対策に従事し社長賞を受賞。業務を通じ、中堅中小企業の後継者不足の問題を痛感し、解決の一助となるべくM&A業界へ転身。大手M&A仲介会社で全国約50社の譲渡企業様を担当。その経験を活かし、株式会社M&A総合研究所では建設・工事業界を中心に、幅広い業種での事業承継と企業価値向上の支援に注力している。
株式会社M&A総合研究所
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