建設業界のM&Aとは【第3回】M&A成立までの流れA 打診・交渉段階
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M&Aは専門家からサポートを受ける場合でも、全体の流れを把握することが重要である。M&Aの成立までの流れは「検討・準備段階」「打診・交渉段階」「最終段階」に分かれる。「打診・交渉段階」の流れは下記の通りである。
@打診・ノンネームシートの提供
A秘密保持契約の締結とネームクリア
Bトップ面談の実施
C基本合意書の締結(M&A相手の決定)・交渉開始
@打診・ノンネームシートの提供
M&Aプロセスが本格化する第1歩が、譲り受け企業候補への打診だ。まずノンネームシートが譲り受け企業候補に提供される。このシートには、企業名を除く企業概要や希望条件など、譲渡企業を確定できない範囲の情報が記載されており、譲り受け企業候補はこの情報を基に興味を持つかどうか判断する。
ノンネームシートは通常、M&A仲介会社などが用意したフォーマットに基づき作成される。譲渡企業に確認して作成するため、M&Aの希望条件、アピールポイント、経営課題などを事前に整理しておくとスムーズに作成できる。
A秘密保持契約の締結とネームクリア
ノンネームシートに基づきM&Aに前向きな譲受企業候補が現れると、秘密保持契約(NDA)を締結する。これにより、譲り受け企業候補に企業概要書を開示する準備が整う。
M&Aの専門家は、関心を示した譲り受け企業候補への企業概要書の開示可否を譲渡企業に確認するネームクリアを行い、許可を得た上で企業概要書を開示する。この段階で企業名や財務情報など詳細情報が明らかになるため、秘密保持契約に違反しないよう厳格な情報管理が求められる。
Bトップ面談の実施
企業概要書を基にさらに具体的な検討が進むと、譲渡企業・譲り受け企業双方の経営者同士によるトップ面談が実施される。企業情報だけでは把握しきれない企業文化や経営理念、価値観など、対話を通じて理解を深める。面談では、両社の相性や信頼関係を築けるかという定性面の判断も行われる。
C基本合意書の締結(M&A相手の決定)・交渉開始
トップ面談後、M&Aを進める意思がある場合、譲り受け企業から譲渡企業に意向表明書が提示される。意向表明書には、株式価格(譲渡価格)、従業員や役員の待遇、M&Aの手法、スケジュールなどが記載される。M&Aの専門家のサポートを受けている場合、これらの条件は企業概要書に基づいて作成されるため、大きな乖離(かいり)は少ない。
意向表明書を基に譲渡企業がM&A相手を選択し、独占交渉権の付与、デューデリジェンス(DD)実施に関する事項、秘密保持義務などより細かい条件が記載された基本合意書を双方で締結する。お互いの合意内容を明文化することで、その後のプロセスを円滑に進める役割を果たす。
執筆者プロフィール
玉田卓也(たまだ たくや)
株式会社M&A総合研究所企業情報第八本部第二部 シニアマネージャー
大学卒業後、株式会社三井住友銀行で7年間、相続対策・事業承継対策に従事し社長賞を受賞。業務を通じ、中堅中小企業の後継者不足の問題を痛感し、解決の一助となるべくM&A業界へ転身。大手M&A仲介会社で全国約50社の譲渡企業様を担当。その経験を活かし、株式会社M&A総合研究所では建設・工事業界を中心に、幅広い業種での事業承継と企業価値向上の支援に注力している。
株式会社M&A総合研究所
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