建設業の資金調達の進め方 第7回「バランス・スコアカードの役割」
いいね | ツイート |
0 |
BSCは、皆様が日ごろ取り組まれている方針展開に似た経営プロセスです。厳選された重要業績評価指標 (KPI) 間のつながりを明確にし、経営者自らがIT(情報技術)を活用し、PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回す、戦略的経営のフレームワークと考えられます。もちろん、高度なITを使わなくてもできます。また、BSCは「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」の4視点で経営をモニタリングしていく手段とも言えるでしょう。
BSCの主な役割をまとめると以下3点になります。
@戦略策定・展開
企業が戦略を策定する際に『目標利益、目標財務バランスを達成するためには、どのような顧客を獲得し、どのように品質管理や施行管理を行うのか、そのためにはどのような組織にするのか、人事をどうするのか』等を、戦略に沿って展開していく必要があります。そのための考えるツールとしての側面があります。
A経営者への情報提供
経営者は非常に忙しいため、毎日全ての経営情報を見ることはできません。しかし、経営者としては常に経営判断、意思決定を行うための情報を手元においておく必要があります。BSCでは、「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」のそれぞれの視点ごとにKPIを設定します。経営者は、戦略が順調に遂行されているかを、KPIデータの確認によって把握することが可能になります。
B業績評価・モニタリング情報
戦略に基づき各部署や従業員の目標管理が策定されます。従業員の目標知識、スキル、リーダーシップレベルが決定されることで、業績評価目標が的確にできるとともに、評価データが適時把握されることで、業績評価が容易になります。また、金融機関に対しても、財務データ以外の定性情報を、数字や書面として見せることができますので、経営計画の進捗状況を適時報告することが可能になります。
BSCは戦略策定、経営者の情報収集、業績評価のツールであるとともに、さまざまな定性情報を定量情報に変えるツールでもあります。金融機関にとっては、定性情報を知りうる大きなツールであり、またモニタリングを行うために欠かせない情報を得ることができます。政府系金融機関を中心に建設業の審査や支援を行うツールとしても活用されてきています。
今回はBSCの役割についてお話しました。最終回となる次回は、BSCの活用方法についてお話しする予定です。
執筆者プロフィール
鰍ンどり合同経営 中小企業診断士・取締役 藤井一郎