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「建設業と個人情報保護法」 =第8回=「従業者の情報漏洩責任」

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今回は、従業者の情報漏洩責任についてご説明いたします。従業者の情
報漏洩は故意にせよ過失にせよ、その所属企業がどれだけ情報漏洩対策
を取っていたかで、社会的な責任も大きく変わってきます。
つまり、情報漏洩対策を取っている企業でその仕組みを破って情報を漏
洩させた場合、仕組みのないところで同じことをやるのに比べて、従業
員の責任は格段に大きくなります。そこで、従業者には、個人情報の取
り扱いについて慎重にやっていこうという意識付けができます。個々の
意識を、情報漏洩を防ぐ方向にシフトさせていくことが重要と言えるこ
とが分かると思います。
ここで、従業者の情報漏洩責任がどこまで問われるかということについ
て、刑事と民事に分けて考えていきましょう。
刑事の場合ですが、情報漏洩させただけでは責任は問えません。わが国
では、個人情報保護は5000件を超える個人情報を扱う事業主に対して責
務があるにすぎません。不正競争防止法でも企業の営業秘密となる場合
に問えるのみとなっております。ですから、従業者が例えば自分のフラ
ッシュメモリーに個人情報を入れて持ち帰って紛失した場合には刑事責
任は問えないと思われます。
民事は、契約によります。例えば、雇用契約を結ぶ際に、個人情報保護
条項が入っていた場合、それを根拠に責任を問える場合があります。し
かし、企業側の個人情報保護の意識が低い場合には、契約するだけで、
ずさんな運用をしている場合などは、責任を問える可能性が低くなって
いきます。
企業に個人情報保護の仕組みがあって、定期的に全社員に教育をして
いて、なおかつ、企業が主体的に個人情報保護の仕組みを運用している
場合に、従業者に故意又は重過失があると民事責任も出てくるでしょ
う。
あくまで、企業がしっかりと個人情報保護の仕組みを持ち、運用してい
ることが前提となります。
言い換えれば、従業者にとっても、きちんと運用していれば個人情報漏
洩はありえないという仕組みがあれば、働きやすくなるはずです。
次回は、建設業における個人情報保護の仕組みについてです。

執筆者プロフィール

個人情報保護研究会 行政書士法人パピルス 行政書士 田中秀樹