建設業の戦略営業−営業マネジメント編− 第1回「なぜ建設営業部門は弱いのか」
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今年7月に財団法人建設経済研究所が発表した「建設経済モデルによる
建設投資の見通し」によると、平成19年度の名目建設投資の見通し額
むは、18年度より0.8%減の51兆8,500億円となった。その内訳をみると事務所・ビル、工場、商業店舗に代表される民間非住宅建設投資が前
年比4.7%増の15兆4,500億円、住宅建設投資が前年比1.3%増の19兆
3,500億円、大半が土木の公共工事が占める政府建設投資が前年比7.5%
減の17兆500億円となっている。
このように非住宅の民間工事は好調(非住宅建設投資は平成16年から連
続の上昇)、住宅工事は堅調、公共工事は低調(政府建設投資は平成10
年から連続の減少)という現状である。ただし、民間工事は製造業の設
備投資の増強や首都圏を中心とした建設ラッシュに支えられているのが現状であり、昨年この連載で何度も述べているように好調といえども価格競争は依然として厳しく、失礼ながら必ずしも各建設企業の営業力が
向上しているからとはいいがたい。
筆者はこれからの建設営業に提案営業は欠かせない要素となりうると提
言しているが、都内のゼネコンでは数年前に掲げた提案営業力の強化が今現在は有名無実化して引き合い案件の対応に終始している状況と聞く。
なぜ建設営業部門は弱いのか。このショッキングなタイトルに違和感や
反発を持たれた読者の方も多いかもしれない。筆者が建設営業部門が弱いと感じるのは、各建設企業に訪問すると大きく下記3点の弱点を見受
ける事が多いからである。
1)営業部門としての組織統制が取れておらず、営業担当者各人がバラ
バラに営業活動を行っている。
普段の営業担当者の直行・直帰が多く、会議などの場でも見込み案件状
況の確認のみで部門としての方針や各営業担当者への支援活動も無く、
単なる個人の集まりとなっている。
2)顧客からの引き合いに依存し、組織としての市場戦略にもとづく能
動的な営業活動がなされていない。
営業活動の大半が顧客からの引き合いに依存しており、組織方針にもとづく市場に対する自ら意図を持った。
能動的な営業活動ができていない(いわゆる待ちの営業となってい
る)。
3)受注目標に対する具体的な施策が組織として活動レベルまで計画化
されていない。
組織として受注目標を達成するための具体的な施策及び計画が無く、目
標設定も月別あるいは個人別に割り振りがされておらず、営業活動の中
に基準が無いため、計画的な受注や見込み案件発掘・ランクアップがで
きていない。
このように業界環境が官民ともに厳しい状況が続いているにもかかわら
ず、建設営業部門の組織自体は以前と何ら変わっていない場合が多い。
長年染み付いている組織風土や慣習を打破していくのは容易ではない。
しかしながら、営業部門は施工部門と並んで建設業には欠かせない部門
であり、請負業としての中心的存在である。
市場環境に左右されない永続的な受注をコンスタントに上げていくため
には、営業担当者の個々の力を組織力に変える営業部門全体の強化・底
上げが不可欠となる。
今回の連載では建設業界の営業部門の第一線で活動されている管理職の読者諸兄を対象に、部門のメンバーを統率し、受注目標を達成するための活動、すなわち営業マネジメントについてヒントとなるよう解説して
いくつもりである。
問い合わせ先
(株)日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所
TEL 03(3950)1178
FAX 03(3952)0430
URL http://www.niccon.co.jp/kensetsu/
E−MAIL kensetsu@niccon.co.jp
ご質問にはお答えできない場合もございますのでご了承ください。
執筆者プロフィール
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所
副部長コンサルタント 酒井誠一