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建設業の戦略営業−営業マネジメント編−  第2回「営業管理職のマネジメント能力が問われだした@」

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1、建設営業部門の2007年問題
 今年は1947年生まれの人が満60歳の定年を迎える。この1947年生ま
れの人から1949年生まれまでの人を、世間は団塊世代と呼ぶ。その数は
670万人にも上る一大勢力である。彼らは日本の経済界に大きく貢献し
た功労者であり、建設業界においても業界の発展に大きく寄与してい
る。その面々がこれから大量退職していく。
 建設現場では技術の伝承をいかに進めていくかが課題となっているが、一方であまり話題に上らないが、営業部門も例外ではない。筆者が
毎年営業研修を行っている某大手設備工事会社では出先の地方営業所は
彼ら団塊世代の営業所長が多い、技術職などから営業に配属され、長く
その地域の顔として人脈を活かした営業を行ってきた。
その彼らの後継者が育っていないのである。否、育っていないと言うよ
りも育ててこなかったと言うほうが正しいかもしれない。なぜなら、彼
らは一人で出先の営業活動を担ってきたのだから。
 建設業は受注が厳しくなると人員に余裕のある企業は人海戦術(技術
部門や事務部門の社員の配置転換等)で営業のマンパワーを拡充する。
ただし、拡充されるのは本社、支店の核となる事業所のみで地方営業所
の場合はむしろ効率性が求められ、一人で何でもこなすことが求められ
る。結果的には、気のついた時には誰も後継者がおらず、ベテラン社員の退社と同時にポッカリと穴が開いてしまう。
 この例に限らず地場ゼネコンの営業部門はベテラン営業担当者が稼ぎ
頭となっている企業が少なくない。建設業は現場を預かる技術屋がいな
いと施工できないため工事部門の人員はいくらか計画的に増強されてい
るようであるが、工事部門と比較すると営業部門は偏った人員構成のま
ま今日に至っていることがまま見受けられる。
2、営業部門にとっての組織とは
 建設業の営業部門には部長、次長、課長と言った役職者が実に多い。
営業職の読者諸兄に対し失礼を省みず申し上げると、その中で実質的に
管理職と言えるのはごくわずかである。マネジャーかプレーヤーかと言えば、大半がプレーヤーである。
 なぜこのような事になっているかと言えば、まず役職者の多い理由は
千万・億円単位の高額商品を売る営業は新卒から営業にまわるのは稀
で、通常は工事・技術部門か事務部門の職歴を経て営業に配属されるこ
とが多く、そのため営業に配属された時点ですでに役付きであったりしていることが主な理由としてあげられる。
 また、彼らの多くがプレーヤーである理由は、官庁営業も民間営業
も、(若干異なるが)基本的には「以前からの付き合い」での営業が従
来中心となっている。この場合、営業部門としては各営業担当者の顧客
窓口さえ割振りを明確にしていれば、「顧客からの引き合いに対する営業活動」という面では管理コントロールがほとんど不要であった。
 しかし、建設業の受注競争が激しさを増し、従来の営業活動では、も
はや限界に達している今日では、このような状況では単に営業部門は組織ではなく、個人商店の集まりでしかない。
 営業管理職の仕事は営業メンバーを動かして受注目標を達成すること
にある。建設営業部門の将来を見越して、今こそ営業管理職は本来の仕事を実行すべきである。
 そこで、次回は建設業の営業管理職が今後目指すべき管理者像につい
て解説する。

執筆者プロフィール

株式会社日本コンサルタントグループ    建設産業システム研究所 副部長コンサルタント 酒井誠一