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建設業の戦略営業−営業マネジメント編− 第3回「営業管理職のマネジメント能力が問われだしたA」

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1、ある若い営業担当者との会話
 先日、ある中堅ゼネコンの教育研修を担当した時のことである。30歳
手前の年齢の、ある若い営業担当者と会話する機会があった。
 いつも何時頃まで会社にいるのか尋ねたところ、彼は毎晩11時過ぎま
で会社におり、休みの日にも会社に出ることも多いと答えた。その理由
は朝から夕刻まで営業活動を行って帰社した後に日報などを作成し、顧
客に提案する資料の作成等に取り掛かると、どうしても夜遅くまでかか
るそうである。
 通常の営業パターンでは、どうしても見積価格の競争となってしま
う。若い彼は少しでもその価格競争とは違う土俵で戦えるよう、日夜提案資料の作成などに勤しんでいる。
 筆者は若い営業担当者がこのように営業努力している姿を見るのが好
きだ。心底、応援したい気持ちに駆られる。
 しかし、その彼にも不満がある。それは、そのような営業努力が上
司・先輩に理解されていないからだ。
 まず第一に彼が、営業活動から帰って顧客との商談のやり取りを報告してもまず具体的なアドバイスがない。上司・先輩からは「自分で考えろ」と言われるので、次のアクションをどうするのかを彼自身の営業知識・経験の中で考えなくてはならない。
 第二に、提案資料などを作成していると、上司・先輩は「俺が君ぐら
いの時は毎晩お客と飲み歩いて人間関係を作り、そんな資料なんて作ら
なくても仕事は取れたもんだ。」という昔の自慢話をされるというの
だ。ただし、彼が言うには、そのような営業スタイルが現代では、もは
や通用しないことに、上司・先輩もうすうす気づいているようだとも語
っている。
 そのような中でも、めげずに日々努力している彼を見ていると頼もし
いとも思うが、反面彼らの上司・先輩の対応が歯がゆくて仕方ない。
2、建設業における営業管理職の問題点
 今、建設業の営業管理職に何が足りないのか。筆者が全国の建設業を
訪問し、営業担当者と接した機会の中で申し上げると次のような問題点が見受けられる。
(1)自ら営業活動を行うことが主となり、部下に対する指導が疎かに
なっている。
 営業部門の管理職はプレーイングマネジャーとして、自ら顧客と相対
しているケースがほとんどである。その管理職が自ら受注を取りに行く
ことを優先するあまり、直行・直帰を繰り返すなどして部下と接する機
会が不足している場合が多い。
 そうなると、営業担当者は個々人が勝手に動くしかなく、コミュニケ
ーション不足から受注活動にロスが生じたりしている。
 また、新人営業担当者(この場合、新入社員ばかりでなく、営業に新
しく配転された中堅社員も含む)が営業に配属されても、わずかな期間
に同行営業などの指導をするだけで、すぐにひとりで客先をまわらせる
ため、基本が身につかないまま年数だけ経過して低業績にあえいでいる者もいる。
(2)管理職としてのリーダーシップ能力に欠けており、部下を統率・
指導できない。
 営業という泥臭い世界に生きる営業担当者は非常に自己主張の強い人
も多い。そのためか、営業管理職が何か指示・命令を下そうとすると、それにいちいち反発して我を通して従おうとしない人を放置・放任して
いる場合が見受けられる。
 また、会議などの集まりにおいても、顧客訪問を理由に会議をエスケ
ープする営業担当者がいる。それを営業管理職がとがめるわけでもない
ため、会議は常に全員そろわない状態で進められている営業部門が存在
している。
(3)自らが営業としての模範を示していない。
 本来、営業管理職はリーダーとして部下に対する営業としての範を示
す立場にある。しかしながら、前にも述べたとおり技術部門や事務部門
から配置転換された人も多いからか、マナーなどの営業の基本も含めて
範を示すに程遠い人がいる。また、このような営業管理職は、営業そのものに自信が無いのか部下に対しては「受注を取ってこい」の一言で終わり、前述の若い営業担当者のケースのようにメンバーに対しての具体的なアドバイスが皆無であったりしている。
 今後、建設業の営業部門がその組織的な営業力を高めていくために
は、この営業管理職の問題点を克服しなければならない。

問い合わせ先
(株)日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所
TEL 03(3950)1178 FAX 03(3952)0430
URL http://www.niccon.co.jp/kensetsu/
E-MAIL kensetsu@niccon.co.jp
ご質問にはお答えできない場合もございますのでご了承ください。

執筆者プロフィール

株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所                    副部長コンサルタント 酒井誠一