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建設業の戦略営業−営業マネジメント編− 第5回「企業方針と戦略を具現化する活動」

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前回、これからの建設営業部門には、受注目標達成のために情報を共有化し、機能化させ、部門全体の営業力を高める仕組みとして、チーム営業が必要であることを論じた。
チーム営業は次の6項目で構成されている。
(1)企業方針と戦略を具現化する活動
(2)営業組織として行動すべき基準の明確化
(3)計画的な営業と実行力
(4)営業情報の共有化
(5)チーム内での問題解決
(6)他部門との組織的な相互関係
今回から(1)の「企業方針と戦略を具現化する活動」より各項目を説明していく。
1、企業方針と戦略がなぜ浸透しないのか
ある程度の規模の企業になると、年度の初めに方針書を作成しているところが多い。今期1年間の企業として、あるいは営業組織としての方針
を、組織メンバーに浸透させる意味が本来の目的と捉える。
しかしながら、方針書がその本来目的と離れ現実の活動と遊離している
にもかかわらず、組織のメンバーはそ知らぬ顔で、幹部社員や管理職に
おいても最初はメンバーにいろいろと口出しをするが、数ヵ月後には方
針書そのものを忘れたかのように、メンバーに何も要求せず1年間を終
わっているケースをよく見かける。
なぜ、このように企業としての方針や戦略などが組織全体に浸透しない
のだろうか。建設業の営業部門に限って論及すれば、下記の理由が考えられる。
@営業メンバーは常に目先の工事見込み案件を追いかけており、従前の
企業方針や戦略よりも工事案件の受注成約に全神経を集中しがちであ
る。
A企業方針や戦略が営業管理職のところで留まっており、営業メンバー
の方へ具体的に下ろされていない。
Bそもそもの方針や戦略が抽象的であり、営業メンバー個々が具体的に
何を行動したらよいのかが理解できていない。
以上の理由が考えられ、方針や戦略が有名無実化しているのである。
2、営業管理職は方針を示せ
チーム営業活動はチームの成員が共通の理念で営業活動を行わなければ
有効的な活動とならない。なぜなら、営業メンバー各人がバラバラの活
動を行っていたのでは同じテーブルで共通理解できる素地がないから
だ。営業管理職はメンバー全員に営業チームとしての方針を明確に示せ
なければならない。方針を示すことにより、メンバーは営業管理職のリ
ーダーとしての考え方や営業活動のあり所を理解できる。営業管理職が
示すべき主な方針として、下記の内容が求められる。
@企業全体の方針にもとづき営業組織(チーム)としての目標を示す。
A営業組織(チーム)として今後の方向性や戦略を明確に示す。
B営業メンバーが日々の営業活動でとるべき基本的な行動指針を示す。
C営業政策上の基本的なスタンス(選別受注あるいは安値受注等の営業
姿勢)を示す。
D営業組織(チーム)内のメンバー相互のチームワークや基本的なルー
ルを示す。
上記の内容について、営業管理職が方針としてメンバーに明確に示すに
当たっては、これらを文書化し、メンバー全員を集めてその趣旨をきち
んと伝えなければならない(決して一部のメンバーに伝達が漏れたり、
文書のみの回覧で済ましてはならない)。
また、方針は数年にわたり、普遍な項目と年度目標に沿って毎年見直さ
れる項目とがあるだろう。また、年度の方針は四半期や月ごとに四半期
方針や月度方針の形で落とし込まれる形が望ましい。
方針はチーム営業が組織的な対応を行うに当たって必要不可欠な行動指
針を与えるため、常に同じベクトルでチーム全員が理解・徹底できなく
てはならない。

問い合わせ先
(株)日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所
TEL 03(3950)1178 FAX 03(3952)0430
URL http://www.niccon.co.jp/kensetsu/
E-MAIL kensetsu@niccon.co.jp
ご質問にはお答えできない場合もございますのでご了承ください。

執筆者プロフィール

株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所 副部長コンサルタント 酒井誠一