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建設業の戦略営業−営業マネジメント編− 第7回「計画的な営業と実行力(1)」

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(1)なぜ方針どおりに動けないのか
今回はチーム営業を進めるに当たっての機能として「計画的な営業と実行力」を取り上げたい。
筆者が全国の建設企業各社に営業研修などで訪問する中で、事前に営業担当者に対してアンケート調査を行うことにしている。40問ほどの設問の中で、各企業とも全般的に営業担当者ができていない項目の中に「新規攻略客への継続訪問を行っていない」と「訪問が見込み客ばかりに集中しすぎる傾向がある」という設問がある。
これらの設問から、ほとんどの営業担当者は既存客や見込み客に訪問が偏り、戦略的な観点で顧客の開拓や訪問活動を行っていないということが見受けられる。
これは、換言すれば営業担当者は受注見込案件を追いかけることに没頭しがちであるということである。営業担当者は受注目標を一にも二にも達成することが使命である点から言えば、これは必ずしも間違った行動ではない。
しかしながら、営業チーム全体で方針や有効営業活動を決めても、このような工事見込案件ばかりに目が行ってしまうと実際のチーム営業活動そのものとは全く乖離した活動となってしまう。そして、このような受注見込案件の刈り込みばかりに注力していると戦略的な動きや新たな工事見込案件の発掘がままならないため、安定的な受注成果を上げることは難しくなる。
従来の建設営業は工事見込み案件が豊富であったが故に顕在化した顧客や需要に対してそれを刈り込むだけの営業(狩猟型)スタイルで良かった。しかし、競合が激しく顕在化した顧客や需要だけでは受注の絶対量を確保することが困難となってきた今日では潜在顧客や需要を開拓する営業(農耕型)が求められてきている。
そこで、戦略的に定められたターゲット顧客に対して定期的なアプローチを行うためには、常にチーム全体で計画的に営業活動を行うことが必要となる。
(2−1)計画的な営業活動の作成
前章でも述べた営業組織(チーム)としての方針と有効営業活動を達成させるためには、チーム全体で合意形成された営業活動の計画を立てなければならない。
すべての行動は「はじめに計画ありき」である。
通常、営業担当者が作成すべき計画は、その期間に応じて次の5種類に分けられる。
@年間計画A半期(四半期)計画B月間計画C週間計画D翌日の計画
まず、@年間計画は1年間の受注目標を達成するためにチーム全体(営業管理職が作成)および営業担当者が個別に作成していく。チーム全体の場合は年間をとおした具体的な戦略としての顧客、商品、地域別の重点市場を明確にした上での活動方針と全体の受注目標達成のための方策を明記する。営業担当者の場合は受注目標達成の上でベースとなる基礎数値(ほぼ受注が確実な工事見込案件の総額)と挑戦目標(受注目標から基礎数値を除いた目標達成に必要な、これから確保すべき受注数値)
を明確にした上で、それぞれの受注対策を同じく顧客別あるいは商品、地域別に具体的な計画を落とし込んでいく。
企業によっては受注目標を半期ごとに設定しているところもある。また、期の前半と後半では営業としての年間受注目標数値は変わらないが前半戦が終了した段階で市場環境の変化や企業の受注実績に応じて見直しが迫られる場合も想定される。このような場合にはAの半期の計画を年間計画と同様に作成する。次のB月間計画以降については、次号で解説させていただく。

問い合わせ先
(株)日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所
TEL 03(3950)1178 FAX 03(3952)0430
URL http://www.niccon.co.jp/kensetsu/
E-MAIL kensetsu@niccon.co.jp
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執筆者プロフィール

株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所 副部長コンサルタント 酒井誠一