「人を活かす:個人の成長が企業の成長」 =第1回=「キャリア〜企業におけるキャリア教育〜」
いいね | ツイート |
0 |
キャリアの説明でよく使われるのが、キャリアの語源が馬車の通った後の轍(わだち・career)と同じであるという事から、一人ひとりが経験してきた仕事上のすべてをキャリアと言う、という考えがあります。そうすると、職務経歴書で書くような内容がキャリアなのでしょうか?
ダグラス・ホールという学者は、キャリアを「一生涯における仕事の経験や行動とともに個人がとる態度や行動の連続」と定義しています。どの様な仕事をしてきたか、どの様な役職についてきたかという客観的な側面と、それに対してそのキャリアを歩んでいる本人がどの様に捉えて意味づけているか(仕事の成功は自分自身がみなすものであって他の人が判断するものではありません)という主観的側面の両面から捉えるのがキャリアであるということです。
さて、前回キャリア教育が大学や高校のカリキュラムに組まれているというお話をさせていただきました。日本におけるキャリア教育はバブル後の再就職支援や、フリーターやニート対策の為に学校教育の場において職業観を育成することを目として広まった為、就職するためのスキルという色合いを強く感じます。しかしキ
ャリアは一生涯続くものですから、キャリア教育も就職すればそれで終わりというものではありません。キャリア教育の最終的な目標は、単に仕事上の成功(地位や収入)ではなく、他と比較するものではない自分の職業や人生を肯定していけるかどうかです。
職業上のキャリアは、仕事の現場で技術を身につけ、職場や社外の人間関係の中で失敗しながらも試行錯誤し、成功体験を積み上げて成長、発達していきます。仕事をしていれば誰でも経験している事なのですが、日々の積み重ねの結果として徐々に変わっているため、案外と本人は自分の成長に気付かないことが多いものです。
例えばこの5年間、10年間で自分が仕事で出した成果や身につけたこと、成長したこと等を書き出してみる。そしてそれがどのような仕事でどの様に行動して得られた成長であったかをじっくりと考えてみる。これも十分キャリア教育です。このように時々立ち止まって今までのキャリアの振り返りを行う事で、「自分はこんなに成長してきた、なかなか頑張ってきたじゃないか」という実感を持つことが出来ます。今まで
の自分を客観的に捉え、主観的に判断し、その上でこれから先の目標を目指していく。
この様な事を定期的に繰り返し行っていく事で、自己肯定が出来るようになり、自信を持って仕事が出来る人が確実に増えていきます。
執筆者プロフィール
天野社会保険労務士事務所 社会保険労務士 CFP(R) 天野由加里