建設業の戦略営業−営業マネジメント編− 第15回「最終章−営業担当者をいかに育成していくか(1)」
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貴社の若手営業担当者は育っているだろうか。「育たない」と嘆く前に
、若手と向き合って育てるための努力をどのようにされてきただろうか。
営業担当者を一人前にし、戦力化するのも営業管理職の仕事である。営
業管理職は営業として必要な知識・技術などの基準を示し、計画的に営
業担当者社員を育てていかねばならない。
10 最終章−営業担当者をいかに育成していくか(1)
昨年8月よりスタートしたこの連載も、いよいよ今月で最後となる。連
載を終わるに当たり、今号と次号で営業担当者(特に若手の営業)をい
かに育てていくかについてお話ししたいと思う。
@営業担当者を育てる時間をどれだけ割いているか
今回の連載ではチーム営業という考え方で、特に情報共有化という点を
強調していたかと思う。ただし、この情報共有化は人によって受け止め
方が異なるのである。
例えばある営業チームの会議で営業管理職が顧客や工事案件などの情報
について話をしたとする。同じ情報であっても営業チームのベテラン社
員は「そうか、この情報は使える!」とほくそ笑んで自分の営業の中に
活用しようと考えたとする。
では、経験の浅い営業担当者(例えば若手社員)が同じように情報を聞
いた時にピンとくるものがあるかどうかが大事なのであるが、情報に関
する問題認識の精度が悪いと情報を聞いただけで終わってしまう。
実は営業担当者が顧客と商談活動を行うに当たって、より有効性の高い
営業ができるかどうかを考えると、情報共有化の問題一つをとってみて
も営業担当者の経験や能力などの高低で効果的にもなり、そうでない形
にもなるのである。
あなたの営業組織はいかがだろうか。「若い営業担当者が育たない。使
えない」と言う前に、どのくらい本人と向き合って育てるための努力を
されてきただろうか。前述のように情報の共有化についても、「若手営
業担当者が理解できていない」と感じたら、若手営業のために提供情報
を噛み砕いて説明するぐらいの指導はされておられただろうか。
筆者は研修指導先のゼネコンの営業担当者に、情報共有化の一つである
営業ミーティング(会議)の時間を尋ねると、せいぜい週に1〜2時間
程度、月の会議でも2〜3時間程度であり、内容も受注見込み案件の進
捗管理が多く、とても営業管理職が若手営業社員の指導を兼ねて行うよ
うな中身になっていないところが大半である。
営業担当者を一人前にし、戦力化することも営業管理職の立派な使命で
ある。「受注目標達成のための活動に忙殺されて育成がなおざりになっ
てしまった」などということは言い訳にしかならない。
A営業として一人前の基準はあるか
筆者が建設企業各社に訪問した際によく確認するのが、例えば工事部門
であれば「一人前の現場代理人として必要な知識・技術などの能力要件
を記述したものがあるか」ということをよく質問する。工事部門は新入
社員として入社して数年の経験を経て一人前になっていくわけであるが、
現場も昔のように「俺の後ろ姿を見て覚えろ!」というような前近代的
な方法では若手社員は育たない。常に能力の棚卸をしながら段階的に指
導育成をしていかなくてはならず、そのためには一人前の技術社員とし
ての基準が示せなければならない。
上記の現場代理人としての一人前の基準が作られている企業は実のとこ
ろそれほど多くはない。しかしながら、現場代理人としての基準を作成
している企業においても、これが営業担当者の基準まで作成しているか
ということになると筆者の経験では皆無に等しい。
営業担当者を一人前にするのであれば「まずは3年くらいの経験を積んで
・・・」などというアバウトなものではなく明確に身に付けておくべき
基準を明確にすべきである。
営業管理職は営業として身に付けておくべき能力(知識・技術など)の
基準を営業組織の中で話し合って明文化し、それにもとづき育成の必要
な営業社員との間で毎年目標設定しながら計画的な指導育成を行ってい
くべきである。それによって漏れや偏りのない総合的な能力を身に付け
た営業担当者を育てることができるのである。
建設営業担当者の能力基準については、ご参考までに中央職業能力開発
協会というところで総合工事業・建設営業職の職業能力評価基準をHP
上で公開しているので参考にされたい(下記URL)。
http://www.hyouka.javada.or.jp/search_gyoushu/data/02301/001.html
問い合わせ先
(株)日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所
TEL 03(3950)1178 FAX 03(3952)0430
URL http://www.niccon.co.jp/kensetsu/
E-MAIL kensetsu@niccon.co.jp
ご質問にはお答えできない場合もございますのでご了承ください。
執筆者プロフィール
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所
副部長コンサルタント 酒井誠一