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『これで解決!問題社員の労務トラブル』 〜会社も安心!社員も納得!〜 =第3回=社員を採用するときに注意する点は?

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求人募集の内容一つとっても、例えば「年齢的な制限を設けてはいけない」「性別で差をつけてはいけない」といったさまざまな法律上の制限があります。最近は外国人労働者も増えており、外国人採用でも適正に対応をしていないと会社が罰せられることになりかねません。
法律上の制限をクリアしながら、自社にマッチした人材を採用するためには、どのような点に注意しなければいけないのでしょうか。

(1)法律上の制限
ハローワークなどの行政官庁のパンフレットには、「採用は公平に」「就職差別は禁止」「性別や年齢での制限はできません」など、さまざまな採用に関するルールが書かれています。
しかし現実には、「求人応募者の中から実際に誰を採用するか」は、企業の経営にインパクトを与える問題であり、課題でもあります。行政官庁の関与は正直なところ「大きなお世話」ともいえるわけです。とはいえ、法律を守らず、企業が欲しい人材の条件だけを挙げるわけにもいきません。
現行の法律では、以下のような制限が設けられています。
@雇用対策法による制限
 求人募集を行う場合、合理的な理由がある場合を除き、原則として年齢制限を設けることができません。
A男女雇用機会均等法による制限
「女性は自宅通勤者優先」「男性向けの仕事」といった表現はできません。また「男性5名、女性2名の募集」「営業マン募集」といった表現も違反となります。こうした場合には、それぞれ「男女10名の募集」「営業職募集」などと表現しなければなりません。
ポイントは、▽性別によって採用条件を分けない▽一方の性のみを表現する名称で募集しない―ことです。
B職業安定法による制限
応募者に誤解を与えるような虚偽の求人広告を出すと処罰されます。
例えば、営業職の募集で実際には有り得ないような過度の歩合給を提示したり、親会社の名前(=信用度合)を利用した求人広告などは、注意が必要です。

(2)採用面接での注意
このほか、採用面接を行い、または履歴書を提出させる場合には、採用を決定するために必要な範囲で、応募者の個人情報を収集・保管・使用しなければなりません。
応募者にエントリーシートを記入してもらう場合や、履歴書と職務経歴書などを送付してもらう場合は、「書面により記載された本人の個人情報を取得する場合」に該当しますので、あらかじめ本人に対して、その利用目的を明示しなければならないとされます。
具体的には、個人情報の利用目的を採用募集ページに明示したり、応募者との採用面接時に個人情報の利用目的に関する同意書にサインをしてもらったりします。
また、以下のような応募者の個人情報を、採用の決定のために収集することは禁止されています。
▽親の職業、家族構成、本籍など応募者本人に責任のない事項
▽思想や信条、愛読書、尊敬する人物など応募者のプライベートに関する事項

採用面接の場面で、何気なく聞いてしまうような事柄が、実は個人情報の取り扱い上は制限されているということを意外に感じるかもしれません。
最近は、応募者側が個人情報の扱いを細かく要求してきたり、これは違法ではないかと訴えてくることも見受けられるようになってきました。採用する側は、「今まで聞いてきたんだから」「家族構成や本人の思想を確認しておかないと気が済まない」など、これまでと変わらない考えで採用の手続きを進めると、思わぬところから(特に不採用になった応募者から)のクレーム対応に追われることにもなりかねません。

(3)外国人の採用
最近は外国人を採用するケースも増えてきています。
日本に在住している外国人は、「滞在ビザ」と「外国人登録証明書」を必ず所持していますので、採用の際にはパスポート、外国人登録証明書、就労資格証明書などで在留資格や就労可能な職種を必ず確認してください。
ちなみに、「永住者」「日本人の配偶者を持つ場合」「永住外国人の配偶者である場合」「定住者」に該当する場合は、日本人と同じ条件で働くことができます。
留学生の外国人は原則として働くことができませんが、一定の範囲内で「資格外活動の許可」を取って働くことは可能です。留学生をアルバイトとして採用する場合には「資格外活動許可」を取っているかを確認してください。
不法滞在をしている外国人を採用し働かせていた場合には、採用した企業も罰せられてしまいます。知らなかったでは済まされません。人材不足といわれる中、外国人の方を有意義な人材として上手に活用するためにも、在留資格の確認を安易にとらえない対応が必要とされます。

執筆者プロフィール

成澤紀美(スマイング取締役、社会保険労務士)