建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

■「建設業の戦略営業 ―基本編―」=第2回 〜戦略営業の基本的な考え方〜

いいね ツイート
0

 前回は官から民へ市場を求め、その市場へ打って出て行くことの重要性を説明した。しかも、その民間市場へのアプローチは引き合い型の営業ではなく、提案型の営業でなければならないことも話した。
この後は民間市場をターゲットにした提案型の営業を「戦略営業」と名付け、その基本ステップを順序立てて解説しようと思う。ただし、その前にもう一度、上記の引き合い型の営業から提案型の営業へなぜ変わらなければならないかを話したい。
従来の官庁工事はいわゆる指名競争を軸とした典型的な引き合い型の営業である。以前は地域によっては官製談合で工事の発注前に業者が決まってしまうようなケースも見受けられた。さすがに今では指名競争も少なくなり、インターネットで一般競争を検索するようなスタイルになってきたが、基本的にすべての業者がある同一条件の枠組みの中で入札に参加できるということは、引き合い型のスタイルと言わざるをえない。もう少し単的に申し上げれば、指名を受けて入札参加するか、入札可能な工事を検索してから参加するかの違いであって、役所は条件さえ揃えばすべての業者を入札に入れてくれる。これを引き合い型と言わなくて何と表現すればよいだろう。
民間工事も実は同じである。得意先管理は重要であるが、しかし、そこからの引き合いを待つ「待ちの営業=引き合い型」になってはいないだろうか。営業担当者にその話しを向けると、「得意先をまわるのが精一杯で他まで手がまわらない」「新規開拓は歩留まりが悪い」と言った声をよく聞く。実はこのような「待ちの営業」を正当化する抵抗勢力が営業部門に多いほど、その企業の営業力はすこぶる弱い傾向にある。
建設業の営業力というのは基本的に次の方程式で受注という成果に結び付いていく。

営業成果(受注)=工事案件数×成約率

さらに上記の工事案件数は「工事案件数=情報量×入手スピード×正確性」に分解される。工事案件数は情報量という量的な充足度と入手スピード(タイミングを逸しない)と正確性(発注確率の高さ)という質の充足度で成り立っている。
また、成約率は「成約率=自社優位性の促進度×顧客要求対応度」に分解される。「自社優位性の促進度」とは経営トップ・キーマンへの接触や土地・テナントの斡旋、設計協力等々で自社を優位に立たせること、すなわち他社を蹴落として自社が本命になるように仕向ける活動である。
 これに対して「顧客要求対応度」とは顧客が最終的な意思決定(契約)を行う際のキーポイントのことである。特に昨今は最終的に契約締結に至る最大要因として「価格」の要素が最も強い。
 このように見ていくと、先の方程式の中で「工事案件数」は、ほとんど営業が自ら質量ともに確保しなければならず、「成約率」においても営業がリードしながら自らまたは組織の他部門を動かしながら進めていくべき活動であり、これが営業力の強さのバロメータとなる。
 結局のところ引き合い型の営業スタイルでは、この「工事案件数」の受注目標達成に必要な絶対量を稼ぐことができないのである。そして、「成約率」を上げるための手段も引き合いを受けてから策を講じるため限定的となり、結果として「成約率」が上がらないのである。
 筆者が声を大にして言いたいのは、建設各社が従来の「引き合い型=待ちの営業」から早く脱して、「提案型営業=能動的な営業」に変わるべきこと。これがすなわち「戦略営業」への道しるべとなるのである。
 次回は「戦略営業」の基本ステップを説明する。

■問い合わせ先
東京都新宿区下落合三丁目16番14号 第2ニッコンビル
(株)日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所
TEL 03(3950)1178 FAX 03(3952)0430
http://www.niccon.co.jp/kensetsu/
ご質問にはお答えできない場合もございますのでご了承ください。
メールでのお問い合わせは kensetsu@niccon.co.jp


執筆者プロフィール

鞄本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所副部長コンサルタント 酒井 誠一