建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

これで解決!問題社員の労務トラブル 〜会社も安心!社員も納得!〜 =第7回=「本当は減額したい、退職する社員のボーナス」

いいね ツイート
0

12月と1月はボーナス支給の時期。今年は不況感もあってか、企業規模を問わず、支給額が昨年よりも下がるようです。
会社側からすれば、できるだけ支給したいとは思うものの、「退職が決まっている社員にまで満額支給はしたくない」のが本音。このような場合、賞与はどのようなルールで支給すべきなのでしょうか。

まず賞与(ボーナス、報奨金、夏季・年末手当など名称はさまざまあります)は、毎月支給する給与とは異なり、支給基準、支給額、支給方法、支給日、支給対象者などを会社側の裁量により定めることができるものです。
しかし一方では、就業規則にこれらの支給要件が具体的に定められて制度化されている場合には、労働基準法上の賃金(労働の対価)に該当してきますので、定められたルールに則って支給しなければなりません。

一般的には、計算期間となる支給対象期間が設けられており、たとえば「12月支給の賞与については、当年4月1日〜9月30日までの間の勤務実績や事業成績などを考慮して算定する」などとされます。

では実際には、賞与をどのように捉え、取り扱っていくべきなのでしょう。

前述のような支給要件に関し、その決定が会社側=使用者の裁量に任されており、支給対象期間、支給基準、支給日などが不確定なものである場合の賞与は、使用者からの恩恵的な支給にとどまるものと考えられます。

対して、就業規則上でも支給要件が具体的に定められて制度化され、毎年定常的に支給されている賞与であれば、労働基準法上の賃金として解釈されますので、使用者側の一方的な都合で支給したりしなかったりという扱いはできないものとなります。また、既に定められてある支給要件を変更する場合には、不利益変更に当たらないかどうかも考慮する必要があるといえます。

よく賞与支給の要件として、「賞与の支給対象期間中に勤務していても、支給日当日に在籍しない者には支給しない」と定められているものを見掛けます。この場合に、支給要件に該当しない社員に賞与を支給しなくても労基法違反にはなりません。賞与には、過去の勤務実績に対する評価だけではなく、将来を期待する意味合いも含まれていると解釈できるからです。
ただし、この「支給日在籍要件」は、自己都合退職や懲戒免職による退職者に対しては有効とされていますが、定年退職や整理解雇などの会社都合による退職者にまで適用させることは無効とされています。この場合は、たとえ支給日前の退職であっても、対象期間中の勤務時間に応じた賞与が支給されるよう扱う必要がでてきます。

以上の点から、賞与支給に関する支給要件について、▽支給対象者をどこまでとするか▽支給対象期間をどうするか▽支給日を具体的に定めるべきか▽勤務実績はどこまで反映させるべきか▽万が一業績が悪化した場合の減額支給や不支給も考慮するか―などを、自社のルールとして、どの程度まで考慮し定めておくかを検討すべきといえそうです。

執筆者プロフィール

成澤紀美(スマイング取締役、社会保険労務士)