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これで解決!問題社員の労務トラブル 〜会社も安心!社員も納得!〜 =号外=「労働基準法改正と今後の対応」

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去る12月5日に改正労働基準法が参議院を通過し、正式に改正案が決定されました。
今回の改正で注目されるのは、@時間外手当の割増率が一定時間を超えると50%増しとしなければならない点A有給休暇が時間単位で取得できるようになる点―です。施行は平成22年4月1日からとなりますが、今後企業としてはどのような対策を考えなければならないでしょうか。
今回の労働基準法改正内容は、ホワイトカラーエグゼンプション問題などが議論されている際にも取り上げられたものであり、個別具体的な労働時間管理への影響も大きいものとなっています。

具体的には、次の通りです。
1.時間外手当の割増率引き上げ
現在は時間外労働については25%以上の割増率による賃金を支払えばよいとされているのが、改正では月間60時間を超えた時間外労働に対し50%以上の割増率が適用されることとなります。こちらは当面の間、中小企業は猶予されるとされています。
参考)中小企業とされるもの
□小売業:資本金5,000万円以下、または従業員数50人以下
□サービス業:資本金5,000万円以下、または従業員数100人以下
□卸売業:資本金1億円以下、または従業員数100人以下
□上記以外の業種:資本金3億円以下、または従業員数300人以下

2.年次有給休暇の時間単位での取得が可能
年次有給休暇について、5日以内の有給休暇を時間単位で取得する事が可能となります。この時間単位での取得を行うには労使協定の締結が必要とされます。

時間外手当の割増率アップは中小企業には猶予されているものの、一定規模以上の企業では約1年後に適用されます。来年中には人件費をどう捉えていくべきか、労務管理上の課題解決などが求められることになります。また60時間という制限枠を超える残業が発生した場合にサービス残業とされるのではと懸念されている点から、改正以降は労働基準監督署の指導が強化されるとも考えられているようです。

年次有給休暇については、5日以内の日数に制限されているとはいえ、従業員側からすると有給休暇の取得がしやすくなるというメリットもあり、導入要望が高まると考えられます。一方で、遅刻や早退への年次有給休暇の充当などをどのように扱っていくべきか、1日または半日単位での取得分と合わせての有休管理をどのように行っていくべきかなど、多方面からの管理を求められることから、企業側は管理が非常に煩雑(はんざつ)になると予想されます。

執筆者プロフィール

成澤紀美(スマイング取締役、社会保険労務士)