これで解決!問題社員の労務トラブル 〜会社も安心!社員も納得!〜 =第9回=「セクハラ・パワハラ対策は労務管理のキモ」
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セクシュアル・ハラスメント(以下セクハラ)、パワー・ハラスメント(以下パワハラ)、モラル・ハラスメント(以下モラハラ)と、社内外・性別によるもの、上司との関係、モラルなど、様々な嫌がらせが問題となっています。
2007年4月1日から改正男女雇用機会均等法が施行され、会社に対するセクハラへの対策強化が求められるようになりました。
男女雇用機会均等法(以下、均等法)は1986年に施行され、女性労働者の福祉の向上を目的としてスタートしたものです。1997年の改正により、社員の募集、採用、配置、昇進などでの全面的な女性差別の禁止、セクハラ規定の整備などが行われました。さらに今回の改正では、男女双方に対する性差別を禁止する法律となっています。
法律では、会社に対して、セクハラの防止や対策に関する体制整備など、具体的な措置を講じることを義務づけています。
例えば「会社は就業規則などで、職場で行ってはならないセクハラの内容、セクハラがあってはならないという方針を文書として定め、管理者を含む労働者に周知・啓発する」「セクハラに関わる性的な言動を行った者に対する対処の方針も、就業規則などで明確にする」などがあります。
社内でのセクハラ研修などを定期的に行うことも、措置義務を行っていると認められる一例になっています。
法律では、男性に対するセクハラも対象となっています。以前は、女性社員に向かって「女は職場の花でいい」「女性社員は職場で掃除、お茶汲みをすべきだ」といった発言をすると、セクハラに当たるとして問題になりました。これにプラスして、男性社員に向かって「男のくせに根性がない」と言ったり、社員旅行で男性社員にいわゆる「裸踊り」を強要したりすることも、均等法上ではセクハラにあたる行為とされています。
そこで会社として注意しなければならない点がいくつかあります。第1には、均等法で定められている「労働者」とは、社員、契約社員、パート、アルバイトなど、会社が雇用する労働者のすべてを指すということ。派遣社員については、派遣先企業で対策を講じなくてはいけません。
第2には、ここでいう「職場」とは、会社が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指しており、取引先の事務所や取引先と打ち合わせするための飲食店、顧客の自宅などについても、これらの場所でセクハラ等にあたる言動があった場合は、相談や適切な対応の対象となるという点です。
この法律では、会社だけでなく管理職も、セクハラ、パワハラ、モラハラに関して様々な責任を問われることになります。いわゆる中間管理職といわれる立場の場合は、上司と部下の架け橋にならなければならないなど難しい立場に置かれることもしばしばあります。
この問題が抱える一番の難しさは、セクハラやパワハラをされたと感じる当事者の感情に大きく左右されるという点にあります。
同じ行為をされても、好意をもっている相手であれば問題にはならない一方で、嫌悪間を抱いている相手から同じ行為をされればセクハラやパワハラとされてしまう可能性があるのです。
また同じ行為であっても人それぞれに感じ方がちがう点から、「こんなことくらいで」「Aさんは何とも思ってなかったのに」と、セクハラ・パワハラ行為を行ったとされる側も、なぜ自分の行動が法律に違反するのかと疑問を持たれるかもしれません。
人間関係そのものが、社員のモチベーションや仕事の中身に影響することから、労務管理上では、これらへの対策が「ツボ」であるともいえるでしょう。
執筆者プロフィール
成澤紀美(スマイング取締役、社会保険労務士)