建通新聞社

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　そもそも既存建築物のテナント・オーナーはどの様な省エネ意識を持っているのでしょうか。

　一般社団法人日本ビルヂング協会連合会が2016年6月に発行した「中小ビルの経営者ができる地球温暖化防止対策」のビル、テナントの省エネ意識調査結果からみてみますと、テナントの8割以上で省エネ行動を行っていることが分かります。一方、中小オーナーは、省エネ意識は十分あるものの、実際の取組となるとまだ不十分でＢＥＬＳ、ＺＥＢなどの認証まで取得したケースは、ごく少数に留まる結果になっています。

　この結果から、既存建築物の省エネ化、さらに本テーマのＺＥＢ化となればさらに難しいかどうかの答えは、「様々な立場で異なる」のが現状でしょう。しかし、既存建築物のＺＥＢ化に関わってきた筆者は、「既存建築物こそＺＥＢ化によって差別化できる」ことを提案したいと思います。

　実際に既存建物をＺＥＢ化する際には、用途によって難しさはあるもののＺＥＢプランナーに相談の上ポイントを把握し取組むことをおすすめします。

　大前提として、まず、オーナー・事業者・テナントがＺＥＢに取組む目的を明確にします。特に既存事務所ビルではテナントさんの理解が必要不可欠です。目的共有が図られた後、建築図面・設備図面（空調・給湯・照明）が現況と合っているかを確認します。

　図面の保存状態がＣＡＤか紙かでも作業内容が変わってきます。紙の場合は保存状態、図面の明瞭さも作業には影響してきます。30年以上前のビルですと青焼き図面で寸法など読み取れないケースが多く散見されます。

　また、実施時期も考慮が必要で特に補助金を利用する場合は、補助金スケジュールに沿って計画実施しなければならない為、特に注意が必要です。

　まとめますと
�@オーナー・事業者の理解を得る
�A事業スケジュールの作成（補助事業応募の是非）
�B各種図面の入手内容確認
�C図面と現況の不一致がないかの確認
�D断熱強化・設備更新の選定
�E一次消費エネルギー計算
となります。

　給湯を多く使用する用途で給湯設備更新をする場合、既存配管利用の有無なども明確にすることになります。特に寒冷地などの場合は配管の仕様によっても省エネ計算結果に影響します。

　既存建築物のＺＥＢ化の課題は、断熱補強・ガラスの複層化、省エネ設備更新のリストアップ（残存簿価使用頻度も考慮）、既存配管配線の更新か再利用かの検討などです。ＺＥＢ補助金を利用する場合はＢＥＭＳを採用し、使用エネルギー報告が義務付けられていますので、計測機器への配線が必要となります。

　昨年、既存建築物（9階建の事務所ビル）のＺＥＢ化を実施しました。35年前に建てられた事務所ビルでしたので、図面があったものの青焼きで一部劣化していたり、図面と現況が一致していなかったりという問題がありましたが、建築会社・設備会社と連携したことで対応できました。既存のＺＥＢ化は新築以上にステークホルダーとの協力があってはじめて取組めると強く実感した仕事でした。

　ＺＥＢ化の効果は、実際に行った光熱費調査を見ておりますと、改装工事前と比べて大幅な光熱費削減に繋がるという結果が出ています。実施したオーナーさんは、「ＺＥＢにしたことで宣伝ができ注目を浴びるビルになった。環境に配慮したビル更新でテナントさんとしてもアピールでき、賃料にも反映できた。既存ＺＥＢ化は、とても効果的です」と語っておられます。