選ばれる建設会社になるための労務管理
第1回 建設業における人材の現状と課題
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建設業においても人手不足は深刻な課題となっており、働き方改革は待ったなしの課題となっています。働き方改革というと労働時間の削減に焦点が当たりますが、そもそも本来は人手不足における多様な人材の確保を目的としており、中長期的に人材を確保するためにも「女性」「高齢者」「外国人」等の多様な人材を活用することが必要です。
なお、建設業における人材の現状と課題には、大きく分けて次の3点が上げられます。
@他産業より労働時間が長く休日が少ない
建設業は、年間出勤日数が全産業と比較して1割程度多く(※図)、約65%が休日も4週4休以下で就業している状況となっており「長時間労働」の慢性化が課題となっています。
A技能労働者の高齢化と若手人材不足
建設業の就業者の約34%は55歳以上と高齢化が進んでおり(※1)、10年後には高齢者の大量離職が見通されています。したがって若手人材の確保と育成が必要不可欠ですが、29歳以下の建設就業者数は約11%であり(※1)、例えば、若手人材が業界に興味を持っても、親が反対したため入職を断られてしまったという事例もあり、若手人材の確保が難しいということが上げられます。
B若手人材の離職率が高く女性の就業率が低い
全産業のうち、建設業への新卒者の入職率は5.5%となっており、3年目までの離職率を全産業と比較すると建設業の割合が高い(※2)、という現状も確認できます。また、在職者に占める女性職員の割合は、全体で12.4%であり、そのほとんどは事務職であり、女性の技術者や技能者の活用が進んでいない(※3)という現状もあります。
上記の@〜Bの課題を解決するためにも、建設業における労働時間管理や生産性を向上させる働き方改革は必要不可欠となっています。
しかし、いざ実践となると、どこか他人事となり「建設業だから時間管理は難しい」「女性の活躍はすばらしいが、ウチでは無理だし現実的ではない」といって変化を嫌い、ひと昔前の人材活用方法に囚われているという会社も多いようです。一方、同じような環境であっても、人材を確保できている会社もあり、そのような会社では選ばれる建設会社になるための魅力ある労務管理を実践しています。例えば、技術系の新卒者を採用する際にも、魅力ある労務管理を実践している会社は、学生はもちろん保護者や学校の先生からの人気も高いという事例もあります。また、最近の若手人材は、長時間労働を嫌い、仕事と私生活を両立させたいという傾向も高く、魅力ある労務管理の実践は、若手人材の価値観にもマッチします。
本コラムでは、人手不足時代に選ばれる建設会社になるために、どのような労務管理を行う必要があるのかを、順次取り上げて参ります。
※図 国土交通省 「建設産業の現状と課題」より抜粋
※1 国土交通省「建設業を取り巻く情勢・変化 参考資料」より
※2 国土交通省「建設業を取り巻く情勢・変化 参考資料」より
※3 国土交通省「建設業における女性の活躍の場の拡大へのロードマップ」より
執筆者プロフィール

吉川 直子
株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士
社会保険労務士/(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。大学卒業後、アパレルメーカー、労働保険事務組合、社会保険労務士事務所等に勤務後2005年に社会保険労務士として独立。人材育成への関心からコーチングのトレーニングを2003年より開始し、プロコーチとしても活動する。その後コーチング事業を法人化し、2011年株式会社シエーナを設立。現在は、企業向けコーチング、企業研修、人事評価制度の構築、就業規則の作成、人事労務相談等を中心に活動中。プライベートでは1児の母。建設業向けの各種事業主団体や商工会議所等の講演、企業研修の実績多数。著書に「社会保険・労働保険手続きインデックス(税務研究会出版局)」「中小会社の人事・労務・人材活用図解マニュアル(大泉書店)」 「人ひとり雇うときに読む本(中経出版)」などがある。https://sce-na.com/(株式会社シエーナ ホームページ)
https://sce-na.net/(社会保険労務士シエーナ ホームページ)
https://kensetsu-jinzai.com/(建設業様向けホームページ)