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何を生み出すのか 建設キャリアアップシステム
第4回 専門工事業の施工能力を評価

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 所属する技能者の能力評価を指標の一つとして、専門工事企業を評価する。価格競争だけではなく、元請け企業や発注者から適正に施工能力が評価される市場を整えるのが「専門工事企業の施工能力の見える化制度」の狙いだ。業界統一での構築を目指すこの企業評価制度は、建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録された技能者・事業者情報を活用できて初めて実現する。

 公共工事の評価指標として経営事項審査が定着している元請け企業とは異なり、専門工事企業には統一的な企業評価の指標はない。ある元請けは専門工事企業の動員力を優先し、別の元請けは過去の施工実績に着目する。

 CCUSが今年4月から本運用を開始したことで、就業履歴と保有資格という業界共通の技能者の能力評価の指標ができた。技能者の能力は、所属する専門工事企業の施工能力を左右する重要な要素でもある。所属する技能者の能力評価をベースとして、その技能者が所属する専門工事企業の施工能力を「見える化」する。

 見える化制度の評価基準は、建設技能者の能力評価制度と同様に、専門工事業団体が職種ごとに定める。企業から申請を受け付け、評価機関となるのも専門工事業団体だ。

 各企業の評価項目はおおまかに「基礎情報」「施工能力」「コンプライアンス」の3項目を設定し、それぞれの項目に小項目も定める。項目ごとに4段階の☆印で評価し、経審のように総合評定値は表記しない。

 施工能力の評価項目であり、評価基準に必ず盛り込むよう求めているのが▽建設キャリアアップカードの保有者数▽所属技能者に占めるレベル3以上の者の割合▽所属技能者に占める29歳以下の者の割合・所属技能者の平均勤続年数の合算―の3項目。これらの取得にはCCUSの登録情報を活用する。基礎情報の「建設業許可の有無」や「財務状況」も、CCUSの事業者情報で確認するため、CCUSへの事業者登録が評価の前提となる。

 ガイドラインでは、職種特性に応じ、独自に評価項目に加えることができる「選択項目」も定める。例えば、下位の下請け企業に所属する技能者も含めた「動員力」を評価することも可能だ。ただ、動員力を評価されるのは1次下請けで、評価対象も2次下請けに所属する技能者までとする。躯体系ではない職種の評価には「建設機械保有台数」を盛り込むこともできる。

 国交省は現在、専門工事業団体や有識者による「専門工事企業の施工能力見える化等に関する検討会」のワーキンググループで、見える化制度のガイドラインと職種別の評価基準の「モデルケース」を検討している。モデルケースを策定しているのは、▽全国鉄筋工事業協会▽全国基礎工事業団体連合会▽日本機械土工協会▽日本型枠工事業協会▽全国建設労働組合総連合▽日本左官業組合連合会―の6団体。

 検討会での議論を踏まえ、国交省は2019年度中にガイドラインを策定する。このガイドラインに従い、各団体は評価基準案をまとめ、20年度以降、国交省に申請し、認定を受ける。合わせて、20年度には、評価基準に沿って評価を行うシステムを国費で開発。21年春の運用を目指す。

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