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中堅中小企業M&Aで失敗しない進め方    第1回 準備(企業評価と案件化)

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 近年、建設業界では事業承継や人材獲得課題などの理由からM&Aが増加しています。今回は会社を戦略的に譲渡するM&Aで失敗しない進め方について全5回の連載にて解説します。

 まず重要となるのは企業評価と案件化です。本格的に相手探しを進める際の最初の工程です。適切な条件で適切な候補先を探すために、「自社の徹底的な現状把握」が重要となります。

■企業評価
M&Aにおいて譲渡価額交渉のもととなる株式価値評価を行います。収益性や財政状態・成長性・経営計画など総合的に評価します。建設業においては未成工事支出金に資産性があるか、簿外負債がないかなどを確認していきます。適切な条件でお相手を探すためには、株価評価手法や自社の株式価値を知ることは重要です。

■案件化
事業内容や業界の状況を詳細に分析し、適切な相手を探すための企業概要をまとめます。M&Aのマッチングの際には、シナジー効果(相乗効果)が最大化できる相手を選ぶことが大切です。そのため、まずは自社の業務プロセスや強み・弱みを十分理解することが重要です。

■注意するべきポイント
「企業評価と案件化の段階で簿外負債があることを申告せず、その後の監査で簿外負債があることが発覚してしまった」といったケースでは相手との交渉が難しくなるだけでなく、相手からの信頼を失います。そういった状況を避けるために、企業評価と案件化の工程において最も重要なのは、自社のリスクも含めて全てをオープンにすることです。事前にリスクを認識できていれば対処することも可能です。相手との交渉で不利な状況とならないように、想定されるリスクを事前に共有しておくことが必要です。

 いかがでしたでしょうか?企業評価と案件化にて、「自社の現状把握」をしっかりと行うことが、次の工程で適切な条件で適切な相手を探すことに繋がります。次回はその相手探し(マッチング)について解説します。

執筆者プロフィール

前川拓哉(まえかわ・たくや)

前川拓哉(まえかわ・たくや)
(株)日本M&Aセンター業種特化事業部業界再編部シニアチーフ 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、新卒にて日本M&Aセンターに入社。祖父の事業承継課題という身近な問題から、M&Aによる中小企業の存続と発展を使命に従事。最年少にてディールマネージャーに昇格。現在は建設業界に特化したチームをリードし、数多くの業界再編型M&Aを推進する。 (株)日本M&AセンターHP(https://www.nihon-ma.co.jp/sector/c_construction.php