中堅中小企業M&Aで失敗しない進め方 第4回 婚約(基本合意・監査)
いいね | ツイート |
0 |
第四回は、基本合意と監査です。ここでは大まかな流れを説明し、注意するべきポイントを解説します。
■基本合意
TOP面談にて両者の理解を深め、大方の条件が確定した段階で基本合意を締結します。ここで言う大方の条件とは、M&Aスキーム(100%株式譲渡など)や譲渡価格、スケジュールなどが一般的です。また基本合意の契約主体には仲介会社が入ることはなく、譲渡企業と譲受企業との2者間契約になります。さらにこれまで複数の候補先との交渉が可能でしたが、基本合意は1社とのみ締結し、その相手と1対1で交渉を進めていくことになります。
■注意するべきポイント
基本合意では問題を先送りしないことが重要です。このプロセスで条件をしっかりと決めておかずにM&Aのフェーズを進めていき、後から問題を解決しようとするのは困難です。問題の先送りによってM&Aがブレークしてしまえば、ここまで時間をかけて交渉を進めてきた両者の時間が無駄になってしまいます。そのようなことを避けるためにも、基本合意時点で問題の積み残しがないようにしていきます。
■監査
基本合意締結後の次のステップは監査です。譲受企業がこれまで検討を重ねてきた譲渡企業の情報に、事実と相違がないかを確認するフェーズです。監査は、譲受企業があら探しをする機会では決してなく、譲渡企業への理解を深め、提携後の相乗効果を最大限引き出すための準備する機会でもあります。
■注意するべきポイント
監査では誠意ある行動をすることが大切です。監査は、企業のオーナーにとって労力がかかり非常にストレスを感じる場面です。監査において誠意ある行動ができないと、必要以上に時間を要するだけでなく、最悪の場合には相手からの信頼を失う可能性もあり得ます。資料準備をスピーディーに対応することや、インタビューの質疑において正確に回答するなどを心掛ける必要があります。
次回は最終回です。M&Aの最後のプロセスとなる最終契約締結・株式譲渡について解説します。
執筆者プロフィール

前川拓哉(まえかわ・たくや)
(株)日本M&Aセンター業種特化事業部業界再編部シニアチーフ
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、新卒にて日本M&Aセンターに入社。祖父の事業承継課題という身近な問題から、M&Aによる中小企業の存続と発展を使命に従事。最年少にてディールマネージャーに昇格。現在は建設業界に特化したチームをリードし、数多くの業界再編型M&Aを推進する。
(株)日本M&AセンターHP(https://www.nihon-ma.co.jp/sector/c_construction.php)