中堅中小企業M&Aで失敗しない進め方 第5回 婚約(最終契約・引き継ぎ)
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最終回の第五回は、最終契約と引き継ぎです。ここでは大まかな流れを説明し、注意するべきポイントを解説します。
■最終契約
基本合意後の監査を経て、M&Aに係る全ての条件を確定させて最終契約を締結します。まずは監査結果をもとに、基本合意の契約内容と差異があったものを中心に諸条件を調整していきます。そして諸条件を反映させた最終契約書をもって晴れて最終契約を締結します。最終契約は、初回の相談から1年程度かけて積み重ねてきた集大成であり、M&Aにおける全ての決定事項になります。
■注意するべきポイント
最終契約では、株価などの諸条件だけでなく、あらゆる事象における責任の所在を明確にすることが大切です。この内容をおろそかにすると、M&A後のトラブルにつながります。トラブルを回避するために、M&Aに精通した専門家(仲介会社や弁護士など)に相談しながら契約書の作成をしていくことが重要です。
■引き継ぎ
最終契約後は引き継ぎのステップに進んでいきます。まず初めに行うのは社員や取引先への開示です。これまで水面下で進めてきたM&Aの事実をこの段階で初めて開示します。その後は、両者のシナジー効果を発揮するための統合を進めていきます。M&Aはさまざまなステークホルダーに影響を及ぼすため、開示や統合の進め方には十分に留意する必要があります。
■注意するべきポイント
従業員への開示については、M&Aに至った背景や思いをしっかりと伝えることが大切です。開示方法や伝え方を誤ってしまうと、従業員が無用な不安を抱く可能性があります。いつ、誰と、どのように発表するのかを事前に決めておき、M&A後の統合がスムーズに進むような体制を整えていくことが求められます。
いかがでしたでしょうか?「中堅中小企業M&Aで失敗しない進め方」と題して、全5回のコラムをお届けしてきました。M&Aの各ステップにおいては注意するべきポイントが多くあります。M&Aで後悔しないためにも、仲介会社などの専門家に相談しながら進めていくことをおすすめします。
執筆者プロフィール

前川拓哉(まえかわ・たくや)
(株)日本M&Aセンター業種特化事業部業界再編部シニアチーフ
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、新卒にて日本M&Aセンターに入社。祖父の事業承継課題という身近な問題から、M&Aによる中小企業の存続と発展を使命に従事。最年少にてディールマネージャーに昇格。現在は建設業界に特化したチームをリードし、数多くの業界再編型M&Aを推進する。
(株)日本M&AセンターHP(https://www.nihon-ma.co.jp/sector/c_construction.php)