Catch-up 水道行政の移管
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水道行政の大半を厚生労働省から国土交通省に移管することが決まった。次期通常国会に法案を提出し、2024年度に施行する。水道事業は地方公共団体が運営しており、人口減少による経営悪化や既設管路の老朽化に直面している。人命に直結する水道を持続可能なものとするため、国交省が持つインフラの整備、管理ノウハウを生かすことが求められる。
今回の移管は、厚生労働省の感染症対策機能の強化に向けた組織見直しの一環だ。政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が9月に決定した。水道の整備・管理など関係する行政の大半を国土交通省が担当することになる。水質基準の策定は環境省が受け持ち、水質・衛生に関わる一部の業務について国交省と連携する。
水道管路の整備や給水といった事業は、国直轄でなく全国の地方公共団体が行っている。特に人口減少の深刻な地方部では経営環境が厳しく、給水コストが料金単価を上回る事業体は全体の4割に上る。高度成長期に集中整備した管路の更新に加えて、災害に備えた耐震化も急務だ。
政府はこうした課題に対し、国土交通省がインフラ整備や下水道運営、災害対応に関して有する能力・知見と、「層の厚い地方組織」を生かす方針だ。これを受けて斉藤鉄夫国交相は会見で「水道整備・管理行政のパフォーマンスの一層の向上を図るため、移管に向けて準備を進める」と述べた。
自治体では、上下水道を同一組織で扱うケースも多い。下水道を所管する国交省への水道行政の移管は、窓口の一本化につながると期待する声も聞かれる。
国交省での受け入れ体制は明らかになっていない。下水道を担当する水管理・国土保全局が対応するとの見方が有力だ。
配管工事業界からは、施工会社の実情に配慮した行政を期待する声も出ている。全国管工事業協同組合連合会は、適正利潤の確保に向けて設計労務単価「配管工」の見直しを改めて働き掛ける考えだ。建築配管との違いを明確化し、屋外での水道管敷設工事に特化した積算の在り方を協議するとしている。
水道は暮らし、そして人命に直結している基幹的なインフラの一つだ。まずは、給水を担う自治体に影響しないよう、移管を円滑に進めることが大前提となる。
施設整備費の制約や技術職員の不足など、水道が抱えている多くの課題は、国交省が既に所管している道路、河川などのインフラとも共通している。国交省には、自治体や地方の水道工事業者の声に耳を傾け、協力して課題を解決していく姿勢を期待したい。