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事例から学ぶ、建設業界M&A 第1回 建設業界のオーナー経営者がなぜ会社を譲渡するのか

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 近年、建設業界ではM&Aが増加しています。今回は実際の成約事例をもとに建設業界M&Aについて全5回の連載にて解説いたします。第1回は、建設業界のオーナー経営者がM&Aを選択する理由について紹介します。

■大別されるM&Aの種類
 なぜ建設業界のオーナー経営者が会社を譲渡するのか。その理由は大きく分けて二つのパターンに大別されます。

@ 事業承継M&A
 多くの中堅・中小企業が後継者問題という課題を抱えています。社内外に承継できる親族や従業員がいないとの理由で、オーナー経営者が事業承継M&A(第三者承継)を選択しています。親族であれば、息子は大手企業で勤務していて会社を継ぐつもりがない。子供達には自分の好きな道に進んでほしいから、そもそも会社を継がせたくない。従業員であれば、社内に経営を任せられる候補者はいるものの、自社の株式を買い取るだけのお金がないなど、事業承継の課題はさまざまです。また建設業界特有の課題もあります。建設業許可を維持するには経営管理責任者が必要です。経営管理責任者の要件はさまざまですが、基本は建設業で5年以上の役員などの経験があることです。社内に要件を満たす人がおらず、事業承継M&A(第三者承継)を選択するケースも存在します。

A 成長戦略M&A
 近年増加しているのは成長戦略M&Aです。成長戦略M&Aとは、自社の株式を大手企業あるいはファンドに譲り渡すことでその経営資源を最大限活用し、企業成長を目指すものです。自助努力による成長に限界を感じ、企業としてさらなる発展やそこで働く従業員のために、成長戦略M&Aを選択するオーナー経営者が増えています。オーナー経営者の年齢問わず、会社を売る、買うという思考ではなく、どこと組んで成長するかという考えのもと、数ある経営戦略の一つとして認識されつつあります。

 いかがでしたでしょうか?今回は建設業界のオーナー経営者がなぜ会社を譲渡するのかを解説してきました。次回以降は、実際の建設業界M&Aの成約事例をご紹介しながら、その背景やシナジーなどを解説いたします。

執筆者プロフィール

清水 貴章(しみず たかあき)

清水 貴章(しみず たかあき)
株式会社日本M&Aセンター 業種特化事業部 建設業界専門グループ 青山学院大学経済学部卒業後、損害保険ジャパン株式会社にて保険代理店向けのコンサルティング営業に従事し、日本M&Aセンターに入社。現在、建設業界専門グループに所属し、建設業界の中堅・中小企業のM&Aを支援している。 (株)日本M&AセンターHP(https://www.nihon-ma.co.jp/sector/c_construction.php