建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

Catch-up 進むマンション高経年化、防げ廃墟化

いいね ツイート
0

 ことし4月にマンション管理業協会が創設した「マンション管理適正評価制度」。マンションの管理状態や管理組合の運営状況を6段階で評価し、インターネットで公開するものだ。全国共通の評価基準により、マンション管理の取り組みを市場評価に反映させる。
 背景には、住人の高齢化や修繕積立金の値上げなどの問題を抱え、適切な管理に向けて合意形成ができないマンション管理の実態が少なからずある。
 協会によると、建物の高経年化と居住者の高齢化という「2つの高齢化」により、管理組合の財政が逼迫し、健全な組合運営や大規模修繕工事の計画的な実施を困難にしているという。適切なマンション管理に直結する問題だ。
 横浜市が昨年度に実施した調査では、2割を超えるマンション管理者が「長期修繕計画を作成していない」(「分からない」含む)と回答した。
 マンションの維持管理は原則、所有者の責任でやるべきこと。とは言え、そう単純に割り切れない事態が滋賀県野洲市で発生した。
 築約50年のマンションが廃墟化し、市が管理者に代わり撤去工事を行った。撤去費はおよそ1億2000万円。市によると、区分所有者から費用の一部が支払われたが、全額回収のめどは立っていないという。
 管理不全のマンションについて国土交通省がアンケート調査を実施したところ、懸念される行政コストとして、自治体の8割が「現場訪問などの調査費用」、7割が「助言指導費用」、4割が「行政代執行費用」を挙げた。
 国や自治体も対策に乗り出している。国交省では4月にマンション管理適正化法を改正。管理水準を引き上げるため、マンション管理適正化推進計画を作成した自治体が、一定の基準を満たすマンション管理計画を認定し、必要に応じて、管理者に助言・指導、勧告できるようにした。6月末現在で、都道府県14団体、市区37団体が推進計画を作成した。
 管理計画認定を受けたマンションでは、リフォーム融資の金利引き下げや、修繕積立金の運用サポートも受けられる。何より「適切な管理」はマンションの市場価値を高め、所有する資産価値を高めることになる。
 国交省では、大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税減額の特例措置も要望中だ。管理計画認定を受けたマンションで、長寿命化につながる防水工事や外壁の塗装などを実施した場合に、翌年度分の固定資産税額を3分の1減額しようというもの。マンション管理に特化した初の税制特例となる。
 築40年以上の高経年マンションは現時点で全国に115万戸ある。今後10年で249万戸、20年で425万戸に増加するとされる。急激に増加する高経年マンション。必要な修繕工事がなされず老朽化が進むと、外壁がはがれ落ちるなど周辺住民にも危害を及ぼしかねない。行政代執行による除却となれば自治体にも大きな負担となる。適切な管理が一層求められる。