品確法の20年D 発注者責務に価格転嫁
2025/4/30
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2014年に担い手3法として成立して以降、品確法は、建設業法と入札契約適正化法と一体となり、公共工事の受注者である建設業の「中長期的な担い手の確保・育成」に貢献してきた。品確法にとって3回目となった昨年6月の改正でも、物価上昇への対応や災害時の労災保険加入などを発注者の責務に追加した。
品確法改正に合わせ、政府の関係省庁連絡会議は、今年2月に同法の運用指針を改正することを申し合わせた。3月には、国土交通省が運用指針の解説資料もまとめ、すでに改正品確法は4月から本格運用されている。
今回の改正でも、第7条の「発注者の責務」にさまざまな項目が追加された。品確法は、公共発注者に発注者の責務の順守を求め、「公共工事の品質の確保」や「中長期的な担い手の育成・確保」といった基本理念の実現を目指す法律だ。
資材価格・労務費の上昇によって、受注者が適正な利潤を確保できない工事が増えており、今回の改正では「適切な価格転嫁対策」がこの発注者の責務に追加された。価格上昇分を変更契約に反映するスライド条項を適切に運用できるよう、スライド条項の運用基準の策定を求める。
法改正直後の24年7月時点の調査によると、スライド条項の運用基準を定めていない市区町村は全体の4割以上に上る。運用基準がないと、価格上昇分の転嫁が円滑に進まず、技能者の労務費が減額される恐れがあり、国交省は改正法の順守を各発注者に求める。
災害発生時の緊急対応の充実・強化も、改正法のポイントの一つだ。改正法には、災害発生直後の体制を整えることを基本理念に追加。労働災害の発生リスクが高い応急復旧を念頭に応急復旧の従事者を任意の労災保険に加入させたり、第三者への損害賠償を担保する保険契約を結ぶことを「受注者の責務」とした。
これに応じ、受注者が適正に保険加入できるよう、保険料を予定価格に反映することが発注者の責務とされた。国交省は、災害協定を結んだ企業に対する法定外保険や第三者損害賠償保険の保険料を予定価格に反映できるよう、2025年度中に積算方法を検討する。
地方自治体などの発注者に改善を求める際、国の権限が強化されたことも今回の改正法の大きなポイントの一つだ。品確法と一体で改正された入札契約適正化法によって、国交省・財務省・総務省が改善が進まない発注者に助言・勧告できるようにした。
品確法はこの20年で公共工事の制度や体制を大きく変えたとは言え、まだまだ改善の余地は大きい。社会情勢の変化によって、新たな要請もある。これからも、政治・行政・業界の3者で積み上げてきた品確法はさらに進化し、建設業の持続可能性を高めることにつながるはずだ。
(この連載 了)
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