ホーム > 特集 > 完成特集 > 土木技術の粋を集めた東駿河湾環状道路
東駿河湾環状道路開通
〜土木技術の粋を集めた芸術〜
東駿河湾環状道路(三島塚原IC〜函南塚本IC)が供用を開始し、2月11日に記念式典が開かれた。当日式典には、八鍬(やくわ)隆国土交通省中部整備局長や川勝平太静岡県知事ら550人が出席。天城連峰太鼓による雄々しい演奏もあり、祝賀ムードを盛り上げた。川勝知事は「非常に眺めがいい。土木技術の粋を集めた芸術である」と称賛した。
三島塚原IC開通前1(沼津河川国道事務所提供) |
開通を盛り上げる天城連峰太鼓による演奏 |
東駿河湾環状道路は、1988年度に事業化され、沼津岡宮ICから三島塚原ICまでの10kmについては、09年7月より供用している。この度、三島塚原IC(三島市塚原新田)から函南塚本IC(函南町塚本)までの6.8kmの区間が、14年2月11日に開通した。開通区間で設置されているICは4つで、国道1号に接続する三島塚原IC、伊豆中央道に接続する函南塚本ICの他に、県道142号三ツ谷谷田線に接続する三島玉沢ICと、県道141号清水函南停車場線に接続する大場・函南ICがある。
また、市街地を通過する大場・函南ICから函南塚本ICの区間は、高架橋となっており、高架下の街路についても供用を開始している。
(国交省沼津河川国道事務所提供)
![]() 2011年3月(完了前) |
![]() 2014年1月(完了後) |
東駿河湾環状道路の大場・函南IC〜函南塚本IC間には、伸縮継手のない桁橋の高架橋として日本一の長さを誇る函南高架橋(橋長1246b)と同二位の八ツ溝高架橋(987b)がある。
函南高架橋の橋梁形式は鋼23径間連続非合成少数鈑桁橋。連続化による利点として、掛け違い部がなくなることによる耐震性向上がある。また、伸縮継手をなくすことの利点として、走行時の騒音の軽減や走行性の向上などがある。さらに、将来の伸縮継手の取り替えが不要となるため、維持費用の節減や維持修繕工事に伴う交通規制の回避などの負担軽減が図られる。
その反面、橋梁上部工が長大かつ一体であるため、端部の橋脚ほど温度収縮による上部工からの水平力を受けることから、対策として桁と橋脚の接続部分は多点固定とし、温度変化によって桁に作用する荷重を分散する構造を採用した。
八ツ溝高架橋 建設作業風景(国交省沼津河川国道事務所提供) |
一般的な鋼管杭の施工方法には「打ち込み工法」と「埋め込み工法」がある。工事場所は現場と民家が近接していることや、地下20b以上まで軟弱地盤が存在し、支持層は深いところで40bを超え、被圧地下水の存在による湧水の恐れもある。このため、振動や騒音が小さく、施工時の地下地盤の乱れが少ないとともに、深い支持層まで貫入できる新技術「回転圧入鋼管杭」を大規模に採用。鋼管の先端にドリルが付属しており、回転しながら軟弱層に押し込んでいく。土砂が鋼管に入り込むため、被圧地下水の噴き出しも防止できる。大場・函南IC〜函南塚本ICまでの延長2820bにわたり、下部工基礎に約630本もの回転圧入鋼管杭が使用された。
函南高架橋、八ツ溝高架橋の建設は「独立行政法人土木研究所」や「国土技術政策総合研究所(国総研)」による技術指導を受けながら進められた。
国土交通省沼津河川国道事務所調査第二課の澤田守課長は「課題克服のために新技術に挑戦し、研究所とも連携しながら工事を進めてきた。騒音を軽減し、耐震性や維持管理性にも優れる橋梁であり、地域の安全安心にもつながる」と語った。
〜アクセスが飛躍的に向上〜
2月11日、東駿河湾環状道路(三島塚原IC〜函南塚本IC)が開通し、伊豆半島の「新たな玄関口」がオープンします。この「新たな玄関口」によって、東名、新東名のICから、修善寺の南の伊豆市大平まで、ほぼ走りやすく定時性の高い自動車専用道路となり、伊豆半島へのアクセスが飛躍的に向上します。また、環状道路によって通過交通の都市圏への流入が抑えられるため、都市圏内の渋滞の緩和も期待されます。年間約3,900万人の観光交流客を有する伊豆半島は、首都圏に近接し、高速道路、新幹線等の交通機関、富士、箱根といった連携が可能な周辺の観光地にも恵まれ、大変ポテンシャルの高い地域です。今回の開通に対する伊豆地域の期待が高まってきています。
また、災害発生時に真っ先に必要となるのが、救命・救援ルートの確保です。東日本大震災では、道路啓開を行う「くしの歯作戦」が展開されました。急峻で複雑な地形で地質も脆く、緊急輸送路に指定された道路も十分な災害対策が実施されていない伊豆半島において、この「くしの歯作戦」を展開するには、災害に強い伊豆縦貫自動車道の整備を推進することが不可欠です。
地域の安全・安心、活性化のために、社会資本の整備、管理を進め、更なる発展のために地域と連携を図りながら取り組みを進めていきたいと考えています。
![]() 国土交通省中部地方整備局 |
〜伊豆の輝く未来の先駆けに〜
いよいよ伊豆全域の住民の待望久しい「伊豆縦貫自動車道」の一部を構成する「東駿河湾環状道路」の三島塚原IC〜函南塚本IC間が開通します。
当事務所は、この内県道熱海函南線以南の工事を担当いたしました。この県施工区間を含め、大場・函南IC〜函南塚本IC間は市街地を通過するため、平面街路に両側各10mの環境施設帯を設けるとともに、遮音壁の設置や低騒音舗装の施工等環境面にも配慮いたしました。
このたびの開通により、伊豆地域に向かう際、混雑の激しい沼津・三島の市街地を迂回することが可能となり、旅行速度の向上にとどまらず、観光をはじめとする産業経済面への波及効果や防災や救急医療等多くの効果が期待されます。建設・推進期成同盟会のパンフレットによれば、「伊豆縦貫」のキャッチフレーズは「伊豆の輝く未来を創る」となっています。「東駿環状」はさしずめその先駆けです。
地域の皆様が、このたび開通する「東駿環状」を十二分に活用され、「伊豆縦貫」は必要な道路であることを証明していただくことを期待しています。このことが、この先下田に向かって、建設を進める際の大きな力となり円滑に事業が進められる原動力となります。
当事務所では、「伊豆縦貫」の効果が広く及ぶよう、アクセス道路である(国)136号(仮称)下船原バイパスや土肥拡幅事業等を引続き推進していくとともに、 沼津岡宮ICから伊豆市の大平IC間で、開通後、唯一平面交差点が残る伊豆中央道江間交差点について、早期に立体交差化を図るべく、県道路公社とも連携し、整備を進めてまいります。
静岡県沼津土木事務所長 増島康行 |
〜天城北道路など4区間で事業中〜
伊豆縦貫自動車道は、下田市から沼津市に至る約60kmの高規格幹線道路。東名高速道路および新東名高速道路に接続し、伊豆地域へ高速サービスを提供する。沼津三島都市圏をはじめとする、伊豆地域の交通混雑の緩和や観光振興の支援などに大きく寄与する。
現在までに東駿河湾環状道路(沼津岡宮IC〜函南塚本IC)、天城北道路(修善寺IC〜大平IC)が開通しており、4区間(東駿河湾環状道路、天城北道路、河津下田道路T期、U期)で事業を実施中。
下図は伊豆縦貫道路と東駿河湾環状道路路線図(国交省沼津河川国道事務所提供)
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〜観光振興に大きく寄与〜
今回の開通により東駿河湾環状道路が、伊豆中央道・修善寺道路に接続し、東名高速道路沼津ICから天城北道路大平IC(伊豆市)までの大部分が、走りやすく定時性の高い自動車専用道路となる。
東名高速道路沼津IC〜天城北道路大平IC間の所要時間は、14分短縮され、約30分で行けるようになる。また、環状道路によって通過交通の都市圏への流入が抑えられるため、都市圏内の渋滞の緩和も期待される。
各交通機関との連携により、年間約3,900万人の観光交流客を有する伊豆半島の観光振興に大きく寄与することが期待されている。
〜住民へ作業周知の回覧板〜
工事の進展に伴い、複数の施工会社が事業地内で同時に作業を行うことになり、2008年に沼津土木事務所発注工事の請負会社で組織する「東駿河湾環状道路工事工事連絡協議会」を設立。地域住民に工事への理解と協力を得るため、▽説明責任を果たす▽県民満足度、市民満足度を向上させる▽事業に携わる全ての関係者のモチベーションを上げる−の3点を発注者と施工会社の共通のコンセプトとして種々の活動を展開してきた。
事業地内は、田方平野特有の軟弱地盤の地形を有しており、震動や騒音といった環境面に最大限の注意を払わなければならない場所であるため、用地境に万能塀や震動・騒音計を設置するなどの対策はもとより、近隣住民への作業周知を図るため週末に回覧板を配布したり、工事関係者への周知徹底事項を取り決めたりするなどの活動を発注者を交えて行った。
また、県民の日や土木の日にイベントを開催し、工事現場の見学の他に建設工事に使用される材料・工事模型の展示や建設機械への乗車体験などを行い、地域住民とのコミュニケーションを場を広げる取り組みも進めてきた。
協議会の会長を務める渡辺賢二氏(山本建設)は、「周辺住民とのトラブルなく、県東部地区で最大級の公共工事を円滑に進めることができ、工事連絡協議会を組織したことは大変意義深いものだった」と話している。
土木の日のイベント |
東駿河湾環状道路 開通 |
パレード 伊豆の国市長 |
パレード 下田市長 |
パレード 三島市長ら |
パレード 沼津市 |
パレード 川勝平太知事 |
パレード 熱海市長 |
沼津河川国道事務所 大儀健一所長 |
川勝平太静岡県知事 |
中部地整 八鍬隆局長 |
取材に答える川勝知事 |
万歳三唱 |
■事業主体・区間 | : | 沼津市岡宮〜函南町平井 |
■延長 | : | 15km |
■今回開通区間 | : | 三島塚 原IC〜函南塚本IC |
■延長 | : | 6.8km |
■車線数 | : | 2車線 |
■設計速度 | : | 80km/h(三島塚原IC〜大場・函南IC)、 60km/h(大場・函南IC 〜函南 塚本IC) |
■都市計画決定 | : | 1987(昭和62)年10月 |
■事業化 | : | 1988(昭和63)年度 |
■用地着手 | : | 1994(平成6)年度 |
■工事着手 | : | 2004(平成16)年度 |
■供用開始 | : | 2014(平成26)年2月11日 |
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