2011年の台風12号による紀伊半島大水害から丸3年が過ぎた。「一日でも早く元の生活に戻りたい」「再び災害が起きない安全な紀南にしたい」。こうした住民の願いに応えるべく、三重県熊野建設事務所では、災害からの完全復旧を“最優先課題”として、職員一丸となって取り組んできた。官の努力と民の協力が実を結び、紀南地域にも普段の生活が戻ってきた。そこで、熊野建設事務所の青木節夫所長に、災害発生時の状況から完全復旧までの見通し、災害に強いまちづくりについて聞いた。
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紀伊半島大水害、あれから3年
〜完全復旧までの道のりを追う〜
11年9月初めに紀伊半島を中心に甚大な被害をもたらした「紀伊半島大水害」(台風12号に伴う災害)では、多数の犠牲者のほか住家や農地、公共施設などに大きな被害をもたらしました。
三重県の最南端に位置する熊野建設事務所管内では、9月4日までの豪雨により、井戸川や志原川などの河川で堤防の欠壊や越水などが多数発生し、居住地域などで大規模な浸水がありました。また、紀宝町の大和田川や熊野市の上大長田谷など7渓流で土石流が、紀宝町津呂地地区など13カ所でがけ崩れによる土砂災害が発生しました。
道路では国道42号のほか、県道七色峡線や小船紀宝線など多くの県道で土砂崩壊や路肩欠損などが生じ、14カ所の孤立地域が発生しました。そのため災害発生直後から、三重県建設業協会との間で締結している災害協定に基づき、要請を受けた地域の建設企業や、災害派遣された自衛隊の方々により、孤立地域の解消に向け通行不能になった道路の復旧作業が不眠不休で行われました。
また、地域の建設企業により欠壊した護岸の応急対策や河川の堆積土砂撤去などの緊急対応を行い2次災害の防止を図りました。
甚大な被害を受けた災害の復旧に速やかに対応するため、災害直後に国土交通省のTEC-FORCEの派遣を受け被災状況の調査、復旧方針などの技術的な支援・助言を受けました。また、建設事務所と災害協定を締結している三重県測量設計業協会の会員各社により現地測量や復旧工法の立案などの支援や、他の建設事務所から派遣された職員により査定設計書の作成や現地査定の応援を受けて災害事業の採択を受けました。さらに、12年1月には熊野建設事務所内に災害復旧室が創設され復旧事業推進に向けての体制づくりが行われました。
復旧工事の実施に当たっては、紀伊半島の広範囲にわたり被害を受けたことから、各地で復旧が進められる中で作業人員の不足に伴う工事工程の遅れや、被災箇所が数多く幅員が狭小な道路では、工事に着手すると奥の現場へ進入できず、1カ所ずつ完成させていく必要があり工期を多く要するなど、困難な状況のもとで工事を行ってきました。
河川、海岸、道路、急傾斜施設など管内全体では251カ所で災害復旧事業を実施してきました。
また、改良復旧事業では、二級河川井戸川水系井戸川(熊野市)で河川災害復旧助成事業および砂防災害関連事業を、大馬谷川支川(熊野市)で砂防災害関連事業を、二級河川志原川水系志原川(御浜町)で河川災害関連事業、大川(熊野市)で砂防災害関連事業を、主要地方道七色峡線(熊野市)では上流域、中流域、下流域の3カ所で道路災害関連事業を行っています。
土砂災害に対しては、行方不明者1人の被害が発生した大和田川(紀宝町)や、人家・公共施設などに大きな被害をもたらした上大長田谷(熊野市)など7渓流において、砂防激甚災害対策特別緊急事業などにより砂防えん堤や渓流保全工などの砂防施設の整備を進めています。
災害復旧事業は251カ所のうち約96%に当たる241カ所の工事が完成し、現在10カ所が施工中で、本年度内の完成に向け工事を進めています。
改良復旧事業については、井戸川水系の事業では全体の約61%の工事が完成し、13カ所で施工しており、志原川水系の事業では全体の約80%の工事が完成し、2カ所で施工中です。また、七色峡線の道路災害関連事業では約66%の工事が完成し、7カ所で施工を行っています。これらの改良復旧事業につきましては本年度内の完成を目指し工事を進めています。
土砂災害対策では、7渓流のうち、14年度にはジャングの谷(紀宝町)など3渓流において事業が完了する予定であり、残る渓流においても、地域の安全、安心を確保するため、早期完了を目指します。
大きな被害を受けた井戸川流域では、再度災害の防止に向けて改良復旧事業により河川断面の拡幅、脆弱(ぜいじゃく)な護岸の改築、床固め工設置による河川縦断の是正、流木止めえん堤工の整備などを行い、安全・安心な河道を整備しています。
土石流が発生した渓流では、不安定土砂を捕捉する砂防えん堤に加え、砂防激甚災害対策特別緊急事業により流域の荒廃状況に応じて砂防えん堤や渓流保全工などの施設整備を行うことにより下流域に対する安全性の向上を図っています。
また、ことし8月の広島県の豪雨による土砂災害では、土砂災害防止法に基づく区域指定がなされてなかったことがクローズアップされ、危険箇所の周知の観点から土砂災害警戒区域等の指定推進が求められています。これを受けて、三重県では土砂災害に対するソフト対策として土砂災害防止法に基づく基礎調査を19年度までに完了させ、市町における警戒避難体制の整備に資する土砂災害警戒区域等の指定を加速することとしています。熊野建設事務所においても基礎調査の推進等を図り、ハード事業とソフト事業の両輪で土砂災害対策に取り組んでいきます。
これまで多大なご協力、ご尽力を賜りました市町の首長をはじめ職員の方々、各地の自治会役員をはじめ住民の方々、地域の建設業協会や建設企業の方々に深くお礼申し上げます。
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