神奈川県流域下水道整備事務所が、2018年4月1日で設立して10年を迎えた。相模川、酒匂川の流域下水道を一括して管轄する同事務所のさらなる10年に向けた展望をはじめ、流域下水道事業の課題や整備計画などを松田和幸所長に聞いた。
――最初にこれまでの10年間の歩みを聞きたい。
「2008年4月、相模川総合整備事務所の下水道部門と酒匂川下水道整備事務所が統合し、流域下水道整備事務所が発足した。下水道処理人口普及率は、統合後、相模川流域が93.1%から95.5%、酒匂川流域が77.7%から85.9%にアップ。統合のメリットとして、二つの流域を一つの事務所が統括することで事業の選択と集中、優先順位に基づいた整備など、限られた予算の中で効率的に事業を進捗できたことが挙げられる。この10年間で、施設整備は相模川・酒匂川流域で水処理施設をそれぞれ1系列増設し、処理能力の拡大を図るとともに、相模川流域の右岸及び左岸処理場において焼却炉などの改築更新にも取り組んだ」
――20年目に向けた相模川、酒匂川の両流域の課題と対策について。
「流域下水道事業は、事業着手から間もなく半世紀を迎えようとしており、老朽化施設の増大が見込まれる。また、人口減少や少子高齢化、財政的制約の強まりなど社会経済環境が変化していく中で、持続可能な下水道事業の推進と運営が必要となっている。そのため、ストックマネジメント計画の策定に現在取り組んでおり、今後は、ライフサイクルコストを考慮した予防保全型管理を行うとともに、下水道施設の新規整備、長寿命化対策、改築更新を一体的に捉え、事業費の平準化を図りながら、計画的・効率的な維持管理と整備を進めていく」
――各流域の整備計画はどうか。
「相模川流域下水道では、右岸処理場の北系3号焼却炉(処理能力・1日当たり100d)の改築を進めている。また、防災力強化を視野に、災害時に左右岸処理場の機能を補完し合う寒川平塚幹線(延長約1.5`)の整備推進を図る」
「酒匂川流域下水道では、箱根町湯本地区等の下水道普及を図るための箱根小田原幹線の整備(延長約9.2`)を引き続き進めていく。設備関連では、左岸処理場の焼却炉改築などにも取り組む予定である」

――地震対策や地球温暖化対策にも取り組んでいる。
「東海地震や神奈川県西部地震などの切迫性が指摘されており、施設の耐震化に計画的に取り組むとともに、下水処理場のネットワーク化や相模川流域下水道左岸処理場の津波対策の検討等を進める」
「また、下水処理は多くの電力を消費するため、施設整備、更新に合わせて省エネ型機器を導入し、消費電力量の抑制に努める。焼却施設については、改築更新に合わせて、温室効果ガス発生抑制の効果が高い設備の導入を図る」
――事業内容も変化する中で、下水道整備において地元建設企業に求められるものはあるか。
「当事務所では、流域各地区の地元建設業協会と『地震・風水害・その他の災害応急工事に関する業務協定』を締結しており、大規模地震等の災害時には、応急・復旧対策を引き続きお願いする。また、管路施設等の維持管理における緊急時の対応に備えて、今後とも良好なパートナーシップの構築に努めていきたいと考えている」